本と映画と政治の批評
by thessalonike
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改憲と有事 (1) - 憲法改正のイマジネーションとシミュレーション
b0018539_17561181.jpg憲法改正については、恐らく有事の事態出現が改憲発議に先行する。国民世論の中でどれほど改憲賛成が多くても、平時での議論の積み重ねで改憲草案が一本に纏まることはない。何十年と論議を続けても、自民党と民主党と公明党が一本の新憲法草案に集約することは不可能だろう。有事の出現のみが9条改正を可能にする。21世紀の日本は改憲して戦争するのではなく、戦争をまず始めて、戦時下で改憲を断行するのである。しかもそのときは泥縄的に9条だけが改正され、テンポラリーな形で「普通の国」へと移行し、前文を含めた憲法全体の改正はそこから徐々に段階的に手が着けられる。例えば三年に一度の衆議院総選挙と同時に定例的に憲法改正の国民投票がセットされ、日本国憲法の特徴をなすラディカルな民主主義の人権条項が改悪され消滅して行くことだろう。最終的に改憲プロセスが終わったとき、日本国憲法は大日本帝国憲法とほぼ同じものになっているに違いない。



b0018539_1756287.jpg話題の村上龍の小説『半島を出よ』を見ても、時代設定は2011年なのだが、今から6年後のこの時点に至っても、憲法改正は未だ実現に及んでいない。経済状態や国際情勢はすっかり現在と様変わりしているにもかかわらず、憲法だけは不思議と変わってないのである。これは読者からすれば、意外で興味を覚えるところである。察するに、きっと村上龍のイマジネーションでも、憲法改正の具体像は明確に描き出すことができなかったに違いない。改憲がすでに実行されていたとすれば、具体的にどのような政治的プロセスで改憲が果たされたのかを説明しなければならない。また、出来上がった改正憲法の中身についても読者に説得的に紹介しなければいけない。懼くそれが難しかったのだ。経済的な環境変化、例えばドルや円の暴落とその影響については比較的容易に想像図を描いて舞台を作ることができる。だが憲法についての将来予想は、実はそれほど簡単明瞭ではないのだ。

b0018539_17564381.jpgむしろ憲法改正が未想定なところにこそ、村上龍が熟考して、よく未来の日本を透視した精密な知性があると言うことができる。憲法が簡単に改正できるものでないことを、村上龍は小説の時代配置を設計しながら、なるほどと納得理解したことだろう。平時の延長での改憲は難しい。経済恐慌に襲われても改憲には結びつかない。改憲を媒介するのは戦争だけである。そして現実の国際情勢の中で具体的に可能性を考えれば、日本が戦争を起こす相手国は北朝鮮だけであり、安倍晋三を筆頭とする改憲派は、北朝鮮を活用して改憲の気運を限度まで高め、最終的に改憲に踏み切るときも北朝鮮を利用する。改憲プロジェクトの成否は北朝鮮に懸かっている。安倍晋三や石原慎太郎ら右翼の立場に立ってシミュレーションを試みるならば、改憲は金正日が存命して北朝鮮の独裁政権を維持している間に行わなければならない。金正日が死んで北朝鮮の軍事独裁体制が崩壊したら作戦は不可能になる。

b0018539_17565413.jpg金正日の物理的な年齢を考えれば、右翼にとってあと十年以内が改憲のための戦争を企てるタイミングだろう。柳条湖事件と同じような謀略がどこかで仕組まれるに違いない。何人かの自衛隊員が(謀略の犠牲となって)不運に死に、その国葬が大々的に営まれ、戦時下の異様な空気の中で自公民三党の党首がテレビで厳かに改憲の発議を国民に宣告する。国民投票の当日までには、さらに「北朝鮮特殊部隊による謎のテロ攻撃」を受けて、東京や大阪の市街地で何十人かの民間人が時限爆弾で爆殺されるという悲劇も起こるだろう。そこまでしなければ国民投票で過半数を制することはできないからだ。改憲反対派の一部は北朝鮮に内通するスパイの嫌疑をかけられて、公安に身柄を拘束される事態も出るだろう。戦時下である。そしてこのときのために整備した有事法制が活躍する。謀略と言えば、北朝鮮拉致事件の現在までの政府と右翼の情報操作は、まさに謀略の端緒を示すものである。

b0018539_1757544.jpg柳条湖事件について当時の日本国民は、終戦に至るまで何も真相を知らされることなく、騙されたまま日中戦争へと引きずられて行った。北朝鮮拉致事件についても、いま国民が右翼に騙され隠されている真実は、いずれ全て明らかになるに違いない。北朝鮮との戦争は、ある意味で前哨戦がすでに始まっている。この戦争は憲法改正のための謀略戦争であり、北朝鮮を武力で打倒、征服するための戦争ではない。戦時下の状態を適当に継続させ、その下で憲法を改正し、さらに改正し、続けて改正し、日本の国家体制を名実共に戦前の状態に「原状回復」させる戦争である。大日本帝国憲法を蘇らせ、徴兵制と教育勅語と治安維持法を復活させた時点で、政権は目的を完遂した謀略戦争の幕を引こうとするだろう。だが、それほど簡単な展開になるのかどうか。北朝鮮と日本が戦争状態に入るとなれば、当然、韓国がそこに巻き込まれる事態になる。中国や米国が関わることになる。簡単には終わらない。
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by thessalonike | 2005-05-04 23:30 | 憲法 ・ 改憲 ・ 平和 (7)   INDEX  
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