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本と映画と政治の批評
by thessalonike

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天皇陛下の平和外交 - 象徴天皇制の理念を具現化する陛下
天皇陛下の平和外交 - 象徴天皇制の理念を具現化する陛下_b0018539_9403154.jpg天皇皇后両陛下のサイパン慰霊のTV報道を見ながら、感じたことを急ぎ書きたくなった。天皇陛下は立派である。この人にはありったけの賛辞を惜しみなく与えられる。例の韓国人戦没者慰霊塔への突然の弔問は天皇陛下ご自身の希望によるものだったと伝えられている。懼くそのとおりだろう。日程を隠したのは宮内庁の政治的配慮だと言う。天皇は最初から韓国人慰霊塔の訪問に前向きだったが、政府(官邸)がそれを快く認めようとせず、両者の妥協の結果として公式日程にはない電撃訪問の形式が採用されたのである。わが国の現政権がいかに右翼的で反動的な性格のものかがよくわかる。政府として天皇を韓国人慰霊塔に訪問させたのではなく、天皇が個人的に訪問したのだという既成事実にしたわけだ。例の「昭和天皇の靖国神社への私的訪問」の政治を想起させる。その政府を押し切って韓国人慰霊塔訪問を敢行した天皇陛下は立派だった。無能で失点だらけの政府外交を天皇陛下が必死にカバーしてくれている。



天皇陛下の平和外交 - 象徴天皇制の理念を具現化する陛下_b0018539_9405456.jpg天皇陛下が一人で平和外交に奮闘されている。韓国人慰霊塔訪問のニュースは国内より韓国での方が反響が大きかった。新聞によって報道のスタンスに差異はあるが(東亜日報のように相変わらず厳しいところもある)、韓国の国民はあらためて現天皇の平和主義を認識し、天皇と政府の間の思想的な齟齬と軋轢について状況を察知したことだろう。村山談話の言葉に忠実に外交をしているのは天皇陛下だけだ。前にも書いたが、天皇はまさに現在の日本政治において護憲主義と平和主義の唯一の砦である。三年前のサッカーW杯共催のときも、前年の小泉首相による靖国訪問を発端にして日韓関係が一気に緊張し、W杯の無事催行が危ぶまれたほどだったが、そのときも天皇陛下が出てきて「桓武天皇との所縁」の発言をされ、韓国世論をとりなしたという一幕があった。絶妙の平和外交。今回もまさにそれと同一である。天皇陛下はご自身の意思で踏み込んでいる。日本国民の幸福のために政治をされている。

天皇陛下の平和外交 - 象徴天皇制の理念を具現化する陛下_b0018539_941111.jpg今回、慰霊はサイパン島に止まらず、先の大戦で犠牲者を数多く出したアジアの他の場所への訪問の意思をも示された。言わずもがなだが、これはまず中国大陸を指す。そして韓国、シンガポール、フィリピン、ビルマなどの戦場が念頭にあるのだろう。中国と韓国への訪問の意思をあらためて表明されたのであり、この春から極端に悪化した日韓日中関係の改善に向けて天皇陛下が尽力されているのである。小泉政権の欺瞞外交の尻拭いを国民のためにしているのだ。もし現在の政権が加藤紘一や田中真紀子や菅直人の手にあったなら、天皇陛下の韓国訪問と中国訪問はスムーズに実現され、バンザイクリフで深く黙祷されたように、あの南京の虐殺記念碑の前で犠牲者に祈りを捧げる天皇皇后両陛下の姿を見ることができたに違いない。天皇陛下ご自身がそれを強く望んでおられる。日中日韓関係は一気に改善し、東アジア共同体の未来は幻想ではなくなるだろう。政権を一刻も早くリベラルの手に奪還する必要がある。

天皇陛下の平和外交 - 象徴天皇制の理念を具現化する陛下_b0018539_9412423.jpgこのサイパン慰霊訪問を見て気づいたことだが、結局のところ、日本の対アジア平和外交の政策は村山談話のレベルでは不十分で機能しないのであり、天皇が自ら韓国と中国を訪問して両国国民に戦争責任を謝罪し、犠牲者に黙祷する以外にないのだ。日本国の象徴である天皇がそれを挙行してはじめて日本の戦争責任の問題に外交上の決着がつく。天皇ご自身もそのことをよく理解していて、在位存命中にそれを実行しようとされている。天皇陛下が明確な言葉で謝罪し、哀悼の真を捧げたなら、日本の政治家が後でそれを覆すことはもはや二度とできない。だから韓国も中国も天皇の訪問を望むのである。それしかないし、逆に言えばそれだけで日中日韓関係は未来へ行く。そしてそれは父親が犯した過ちを息子が償って責任を果たす親子のけじめの問題でもある。政治は可能なるもののアートであるというビスマルクの言葉は、今まさに天皇陛下の決断と行動にかかっている。我々は陛下を応援しなければならない。

天皇陛下の平和外交 - 象徴天皇制の理念を具現化する陛下_b0018539_9414036.jpgそれにしても天皇陛下は高齢になられてよくお仕事をされる。東奔西走、不眠不休。激務の連続なのに疲れた様子も見せない。小泉首相などよりはるかに激務だろうと思われるが、君子として常に態度を正されていて、見ていて心をうたれることが多い。この天皇は日本国憲法の象徴天皇制を見事に理念的に現実化された。制度は人によって魂を吹き込まれると言うが、象徴天皇制は明仁天皇によって理念的なものになったと言える。今の国会も内閣も日本国憲法が期待する国会や内閣とは程遠い存在であり、ひょっとしたら大日本帝国憲法の国会や内閣以下かも知れない。それ以上に今の日本の国民は下の下で、日本国憲法の想定する国民どころか江戸時代の庶民と同じかそれ以下だと思われる。最低だ。だがこの国の中で唯一天皇陛下だけが日本国憲法が規定している天皇をよく演じている。満点だ。天皇陛下は立派である。何度でも言う。本当にご立派で日本の誇りである。国民として天皇陛下とともに憲法を守ってゆきたい。

天皇陛下の平和外交 - 象徴天皇制の理念を具現化する陛下_b0018539_9415363.jpg

by thessalonike | 2005-06-29 23:30 | 憲法 ・ 改憲 ・ 平和 (7)   INDEX  
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