本と映画と政治の批評
by thessalonike
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サザンの新曲と衝撃のレゲエダンス - 夏を弾みに時代を前へ
b0018539_14393011.jpg巨人戦が面白くないのでチャンネルを変えてテレビ朝日の歌番組を見ていたら、サザンオールスターズが出演して新曲『BOHBO No.5』を披露していた(29日)。ご覧になられて衝撃を受けた方も多いと思うが、前景に配されたダンスが圧巻で、曲の間は釘づけにされ、見終わっても暫く放心状態が続いてしまった。素晴らしいと言うにはあまりにショッキングで、ショッキングとだけ言ってしまうと感動を素直に告白できない。サザンオールスターズは常に挑戦的で、時代の常識を破壊してくる。番組の性格や時間帯を考えれば、あのレゲエダンスは放送コードをバイオレートするポルノだ。中学生以下の子供が一緒に見ている茶の間にストレートに出すべき映像ではない。だが、見終わって思ったことは、あれを見た父親も母親も、そして子供も、レゲエを踊る女たちの動きに心を奪われ、サザンの強烈なメッセージに折伏され、それを否定する言葉を見つけられないまま納得了解させられたということだろう。



b0018539_14333585.jpgサザンオールスターズは時代に挑戦して時代を作り変える。本当なら倫理基準に抵触する卑猥な映像を、迫力と興奮で視聴者の心を奪い取って押し切った。視聴者は子供に猥褻映像を見せたくない常識的な市民であると同時に、真夏の解放感と脱倫理を堪能させてくれる娯楽を画面に求めている消費者である。その不安定な緊張と均衡の中に視聴者を叩き落とす。それがサザンオールスターズだ。今回のテレビ朝日の映像は素晴らしいものだった。ネットでクリップが限定公開されていて、一曲全部の音と映像を楽しむことができるのだが、クリップのパッケージではレゲエダンスの絵が部分的で、期待したほどには十分に堪能できない。生唾を呑み込んだ『ミュージックステーション』のライブ・パフォーマンスほどショッキングでもエロティックでもないのだ。今回は局のスタッフがよく頑張っていた。映像の企画と構成と撮影が完璧で、極上のライブ映像を作り上げた。ダンサーたちも絶品だった。

b0018539_14335534.jpg猥褻か否か、教育上どうかという議論は必ずあるだろう。だが視聴者としてはああいう度肝を抜くライブ・パフォーマンスを生で見たい。歌番組はあのようでなければならず、歌番組で視聴者に提供する満足の価値とはあのようなものだ。五年か十年の間は感動と興奮を忘れられず、記憶の中に残り続けて「また見たい」という衝動を掻き立てられる映像。もう十年ほど前だと思うが、『夜のヒットスタジオ』の特番を芳村真理が組んだことがあって、そこへ中森明菜がひょっこり顔を出して、久しぶりに三曲ほどスタンダードを熱唱したことがあった。素行不良が祟って芸能界からホサれていた中森明菜を芳村真理が温情をかけてスタジオに呼んだのだが、そのときの中森明菜のセクシーなライブが最高で、他の誰も真似のできない明菜の蠱惑的で躍動的なパフォーマンスに圧倒された。この天才歌手を絶対に日本の芸能界から消してはいけないと確信させられ、いつか生のステージを直接見たいと欲望させられた。

b0018539_14341413.jpg中森明菜はテレビカメラに映像を作らせる天才だ。スレンダーな腰から上を怪しくくねらせ、斜めから挑発的な視線を投げつけ、その視線をアンバランスに宙空に漂わせ、隠していた脚線美を得意げに披露する。見る者をエロティックでミステリアスな世界に耽溺させながら、次の瞬間に何かが起こる危険な予感に包み込む。歌は巧い。あのとき中森明菜とテレビのカメラマンは、きっと篠山紀信と被写体女優のような関係で、一瞬の映像芸術の世界で勝負しているのだが、その芸術創造をリードしているのは常に中森明菜の方で、極上のカットの連続をスタジオカメラマンに撮らせているのである。中森明菜は今でもホテルのディナーショーなどで人気抜群らしいが、彼女の魅力が爆発するのはやはりテレビのカメラの前だと私は思う。中森明菜は天才的な映像芸術をアドリブで作り出す。それをスキルのあるカメラマンが心得ていて、阿吽の呼吸で迫真の映像を切り取る。その映像は視聴者を魅了する。

b0018539_1435157.jpg今回のサザンオールスターズのレゲエダンスは、多少はアドリブが入っていたが、殆どが企画され構成されたものだった。自由奔放に舞い踊っているように見える個別のダンサーの踊りも、恐らく振付師によってデザインされたものである。映像を含めた作品全体のモチーフが四年前の『波乗りジョニー』に類似している。同じ振付師が桑田佳祐の思想の下でダンスを作っている。『波乗りジョニー』のダンスは軽さと楽しさを基調としたユニフォームなものだったが、今回の『BOHBO No.5』は欲情と官能と誘惑の契機を前面に出した過激なものである。それは創作の観点からすれば、趣向を変えたということであり、さらに一歩極めたということになるだろうが、同時に見る側が受け取るそれ以上のメッセージがあって、それは何かと言うと、日本の性事情の進化の問題であり、女の性の主張や表現もここまで到達したのかという発見と驚愕である。サザンは常に時代を塗り替える。日本人に新しい生き方を啓示する。桑田佳祐と原由子に脱帽。
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by thessalonike | 2005-07-31 23:30 | プロフィール ・ その他   INDEX  
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