本と映画と政治の批評
by thessalonike
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ウイニング・ストラテジーの隘路 - 郵政解散をめぐる政治情勢
b0018539_11524569.jpg立花隆による郵政政局の解説が上げられていて、その中で、政治評論家の浅川博忠が『週刊現代』に寄稿した記事を紹介しながら、衆院解散の必至性と総選挙での自民党敗北を予想している。私は四週間ほど前に示した見通しから特に立場を変えておらず、このまま情勢が推移すれば参院での採決はなく、衆院の解散もなく、小泉内閣が総辞職して自民党総裁選が始まるだろうと予測している。万が一の事態があるとすれば、それは小泉首相が靖国政局を仕掛けて行く奇策だろうかと考えているが、現時点ではその動向がよく見極められない。政権と党執行部は必死で反対派の切り崩しを図っていて、採決までは時間はまだ十分にある。可決か否決かの票読みはギリギリの段階まで続けられるだろうし、可決の目処が立たず採決を見送って継続審議に回す場合は一日で格好をつけられる。いろいろと可能性を考えてアドバルーンを上げておくだろうし、勝負はお盆前の会期末最後の日程まで縺れ込むだろう。



b0018539_1153322.jpgこのまま採決すれば結果は否決になるはずだ。そう判断する理由は簡単で、衆院採決の時でさえ執行部の事前予測を大幅に上回る五十一名の造反者を出しているのである。これは自民党議員二百五十名の中の五分の一を占める。衆院の時は今回のような甘い状況にはなかった。よしんば法案が否決になっても解散は確実で、その場合は造反議員は立候補に党の公認を得られないばかりか、除名の事態さえあり得たのだ。そしてマスコミの票読みは圧倒的に小泉執行部優勢だった。岸井成格も三宅久之も無風だろうと言っていた。造反議員はまさに決死の覚悟で青票を投じているのである。一ヶ月前の衆院議員に較べれば今回の参院議員の環境はぬるま湯のようなもので、造反しても最初から何の懲罰もなく、解散するのは衆院であって自分の選挙ではない。分裂選挙になって負けるぞという脅し文句しかないのである。負けるのが嫌なら解散しなければいいだろうと切り返せばそれで終わりだ。

b0018539_11532193.jpg衆院議員で、特に橋本派議員の中には、あそこで白票ではなく青票を入れておけばよかったと後悔している議員が何人もいるだろう。と同時に、もし法案が否決されていればどうなっただろうとシミュレーションするだろう。素直に考えれば自民党の分裂選挙だが、最初から負けると分かっている選挙をやるバカはいない。特に政局小僧の生業で生きてきた小泉首相の場合はそうだ。だから答えは内閣総辞職以外にない。同じシミュレーションは参院議員もやるだろうし、青木幹雄や片山虎之助の話を聞いている限りでは、どっちに一票入れても別に構わないというようなメッセージに聞こえる。仮に総選挙があっても参院は参院で変わらず、議員の身分は動かないし、参院自民党の執行部に変動があるわけでもない。本当に青木と片山が参院で法案を可決成立させる執念があるのなら、参院否決の場合は参院執行部が総退陣すると言うくらいの決意表明は必要だろう。それもない。郵政法案は小泉首相の道楽なのだ。

b0018539_11533755.jpg安んじて青票を投じることができる。ここニ週間ほどの自民党内の攻防の様子を見ていると、執行部側は解散と分裂選挙で脅すだけで、しかもその切り崩し工作は小泉純一郎や安倍晋三ではなく、参院執行部の寝業の方に任せきりである。一方、反対派の方は、継続審議や修正協議の方にベクトルを動かして行くのではなく、完全に否決一点張りの戦略で固まっている状況に見える。これらの動きを眺めていると、小泉首相周辺以外は「小泉内閣総辞職」の想定で動いているとしか思えない。青木幹雄や片山虎之助は、可決なら可決でいいだろうが、否決の場合は一転して「小泉降ろし」で一致結束するだろうし、その可能性に向けての水面下の工作も進めているだろう。誰が新総裁になっても参院自民党の体制は不動という証文を取るべく暗躍しているように見える。丹羽雄哉ら堀内派の一致結束問題が焦点になるが、仮に派が一致結束して行動したとしても、全員が結束して白票はあり得ない。せいぜい棄権だろう。

b0018539_11535349.jpg総辞職せずに解散するとすれば、靖国参拝で内外に大騒動を巻き起こして、混乱の中で民主党右派と手を組み、「改革」を標榜する右翼多数派の政権構想を打ち出して解散するだろうというのが、これまでの私の読みである。小泉首相がモメンタムを作ろうとすればそれしかない。それは四年前の公約どおり国民の前で「自民党をぶっ壊す」ことでもある。そしてその新政権は、消費税増税政権でもあり、また公明党と絶縁した教育基本法改正政権でもある。ところが、もしその新政権構想に向けて勢力を結集しようとすれば、その中枢に位置しなければいけないシンボルである安倍晋三が、最近はどうも郵政政局に対して消極的な姿勢が目立つ。解散を回避するべく継続審議の線を模索しているように見える。これはどういうことかと言うと、安倍晋三は小泉内閣総辞職後の自民党総裁選に自ら出馬しようと企んでいるのだ。小泉降ろしに一枚加わる腹なのである。小泉首相は安倍晋三の支持と援軍なしに解散を決断しなければならない。小泉首相のウイニング・ストラテジーは隘路の中にある。
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by thessalonike | 2005-08-01 23:30 | 郵政政局 ・ ポスト小泉 (10)   INDEX  
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