本と映画と政治の批評
by thessalonike
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刺客芝居 - 「郵政民営化」を争点演出する小泉首相の政治詐術
b0018539_12444735.jpg選挙戦はいま始まったばかりで、これから一ヶ月間の長丁場が続く。趨勢がほぼ見透されて来るのは投票から五日ほど前の9月6日頃だろう。それまで様々な駆け引きと紆余曲折がある。この一ヶ月間を設計図どおりリードできた方が勝利するに違いなく、その点、序盤戦は解散を周到に準備してきた小泉首相が主導権を握って思惑どおりに戦局をドライブしているように見える。先手必勝の理。選挙で最も重要なのはモメンタム(勢い)だ。解散の夜に行った演説は選挙戦序盤の構図を形作る上できわめて重大なインパクトを与え、マスコミに選挙の争点を郵政民営化であると宣伝させる情報工作に半ば成功し、また第一幕を小泉政権対造反派の報復抗争劇として演出することにも成功した。これから暫くの間は、新しい刺客の顔と名前が登場して、それに対して造反側がワンパターンの反論をするという展開が続く予感がする。電波で流される選挙の議論は必然的に郵政民営化問題に収斂され、有権者にはその情報しか入らず、否が応にも「郵政民営化」を争う選挙構図に誘導される。



b0018539_12525085.jpgそしてマスコミに登場する面々の主は自民党の執行部派と造反派の二つになり、郵政民営化や党内運営の是非の話題で時間が埋められ、野党は蚊帳の外に置かれたまま、その主張は視聴者の関心に届かなくなる。それが小泉首相の今回の選挙戦略だ。中盤から後半戦にかけてさらに第二弾、第三弾のモメンタムの仕掛を打って来るだろうが、序盤戦の一週間は「刺客」の話で郵政政局の続きを盛り上げる。一日に一人刺客を小出しにすれば、マスコミはそれに飛びついて来る。噂に上がっている猪瀬直樹や中山恭子が一日に一人ずつ名乗りを上げれば、マスコミはその報道で一日の話題を埋め、大衆の関心を浸し、結果的に民主党など野党からの「雑音」を情報排除することになる。もし猪瀬直樹の担ぎ出しに成功すれば、今月末の公示日までの三週間は、ほぼ毎日民放の電波を小泉政権の宣伝装置として独占することが可能になる。造反組の亀井静香や小林興起には視聴者に訴えて支持を獲得する能力がない。悪役を演じて小泉自民党の票を膨らます効能しかない。

b0018539_185637100.jpg亀井静香や小林興起の説得力は狭い党内に限られたものであり、あの主張と弁舌が議論として通用するのは、同じ自民党議員が集まった身内の席の中だけである。自民党の古株同士なら「一理ある」と頷くこともできるだろうが、自民党内の揉め事の話をどれほど一般視聴者の前でやっても、それは単に見せ物として面白いだけであって、小泉首相の政治手法への批判は市民大衆の共感を呼ぶものではない。また郵政民営化問題だけに限っても、小林興起や亀井静香の口からは納得できる明快なカウンター・プレゼンテーションが出て来ない。小林興起の反論は常に自民党の内側に向けられたインターナルなメッセージなのだ。新しい刺客が出る度にマスコミは小林興起と亀井静香をスタジオに呼んで繰り言と泣き言を言わせる。その繰り返しは小泉首相へ支持と小泉自民党への投票を促すプロモーションとなる。ずる賢い野田聖子は悪役の役回りを小林興起に押しつけて、マスコミのカメラから巧妙に逃亡した。だが、この「改革刺客」と「無能悪役」のプロレス芝居も次第に飽きられる。

b0018539_18542836.jpg両党のマニフェストが出揃い、マスコミで具体的な政策討論が始まれば、国民の関心は年金や税金の問題になり、郵政政局の騒動は徐々に影を薄めて行くだろう。選挙の争点が次第に郵政民営化から離れて行く。逆に言えば、それをどれほど首尾よくやれるかやれないかが、特にTBSとテレビ朝日で試されるのだと言える。政権交代の好機到来として民主党を勝たせようとする朝日新聞と毎日新聞が、どれほどTBSとテレビ朝日の報道番組をその方向でコントロールできるか、その手腕と内部調整が試されている。毎日新聞は小泉支持で狂奔している岸井成格の口を塞がなければならなない。朝日新聞は古館伊知郎と加藤千洋に郵政民営化の改革プロパガンダを止めさせなければならない。猪瀬直樹のスタジオ入りを足止めさせないといけない。猪瀬直樹ではなく武部勤に自民党の政権公約を話させなければならない。菅直人と武部勤で論戦をさせなくてはいけない。小泉純一郎は武部勤の代わりに猪瀬直樹に選挙の争点と政策を解説させようとしているのである。狡猾な男だ。

b0018539_12533758.jpg下に示したグラフは、前回の議論の続きで、過去四回の自民民主両党の得票数と内閣支持率の推移である。小泉政権になってからは選挙結果と内閣支持率がリンクしているように見えるが、森内閣のときと較べると内閣支持率と選挙結果が必ずしも連動したものではないことが分かる。また昨年7月の参院選を振り返っても、投票日一ヶ月前の時点では、例の5月の再訪朝と拉致被害者子供の連れ帰りがあって、小泉内閣の支持率は50%を超えていた。それが6月の国会で政府の年金法案の杜撰さが暴露され、選挙戦では民主党の年金改革案とまともに論争できず、年金問題での劣勢がそのまま選挙に影響して自民党敗北へと繋がった。五年前の森善朗は18%の内閣支持率で総選挙を戦って政権を維持している。国民は森善朗には拒絶反応を示したが、自民党には政権政党として支持を寄せていたのである。今回は国民は政権政党として自民党を信頼する選択はしないだろう。私はそう見ている。小泉純一郎の個人人気だけでは政権選択はできない。ボロボロの自民党は票を託す価値がないのだ。
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by thessalonike | 2005-08-11 23:30 | 郵政民営化 ・ 総選挙 Ⅰ (15)   INDEX  
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