本と映画と政治の批評
by thessalonike
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終戦から六十年 - ユネスコ憲章の言葉を再び日本人のものに
b0018539_12362859.jpgユネスコ憲章には、その冒頭に、「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」と書かれている。戦争の真実を射抜いた真理であり、とりわけ今の日本人が、自らの心を直接に向かい合わせて真摯に考えるべき重い言葉であるように思われる。このブログでも何度か警告し、また昨夜の『ニュース23』の終戦特集でも筑紫哲也が触れていた問題だが、もしも先の戦争について、日本は何も悪い事はしていないのだから反省も謝罪もする必要はないとするならば、同じ事をもう一度やってもよいという結論になる。あの戦争は正しい戦争だったのだから、もう一度同じ事をやっても構わないという論理になる。一冊か二冊、教宣漫画本を読んで洗脳されて右翼になった若い面々は、上のユネスコ憲章の文言をどのように受け止めるのだろうか。日本の若い世代の心の中の平和の砦が崩されている。櫻井よしこや小林よしのりたちのプロパガンダのシャワーによって確実に平和の砦が崩壊させられている。平和人格から戦争人格に人間が作り変えられている。



b0018539_12364649.jpgユネスコ憲章の言葉をそのまま受け止めるならば、日本人の中ですでに戦争は始まっている。近隣諸国である中朝韓に対する戦争が始まっている。14日夜のNHKの討論番組に出演した姜尚中は、最近の中国や韓国の反日の動きについて、その基底にある大きな社会的要因として、それらの国々における民主化の問題を指摘していた。正しくは、民主化と言うよりも言論の自由の社会的拡大であろうが、歴史認識についての国民の考えが、単に国家政府の一部の要人の発言で代表されるのではなく、より広範な人々が口(言論)を持った市民の世論として表面に浮上してきたという現実である。これは特に中国の状況を指す。以前のように周恩来や鄧小平が全中国を一人で代表して、日本の自民党政府と話を着けて(利益確保して)、その合意の線で全国民を黙らせることができるというような時代ではなくなった。中国の国民は人民日報がマイルドに脚色した記事ではなく、インターネットで日本の生の政治的現実を知っている。日本の政権がどれほど極右反動的な性格のものかを知っている。

b0018539_12365655.jpg日本の若い世代は中国に対する日本の侵略戦争の歴史を知らない。学校教育がそれを生徒に教えていないから知識がない。知識のない若者たちが「日本の戦争は侵略ではなかった」とか「南京大虐殺は無かった」とか「中国人は間違った教科書で反日教育を受けている」などと右翼の口真似を言っている。懼く基本にあるのは自己愛過剰と他者無視の未熟な人格性の問題で、要するに他からの批判や譴責に対しては極端に不寛容で、一面的で利己主義的な自己肯定に固縮する現代の日本青年の問題がありそうだが、そうした社会心理の問題はともかく、政権と右翼は日本の若者の歴史的無知と幼稚な精神構造を徹底的に利用して、そこにプロパガンダのシャワーを浴びせて政治ロボットに改造する。反韓反中と反日本国憲法の右翼ロボットを大量製造する。右翼のファナティックな排外主義は、若者の独善的で虚勢的な自己愛至上主義と共振共鳴して、彼らを能動的な政治的人格に変えるのである。政治的知識も文化的教養もないが政治的熱情と攻撃的憎悪だけは旺盛な右翼小僧に変えるのだ。

b0018539_1237584.jpg中国の政府は日本を72年の日中共同声明の基本線に引き戻すべく懸命の努力をしているが、中国の国民は、日本社会の右翼反動化が殆ど不可逆的なものであることを皮膚感覚で感じ取っている。そして現在の歴史認識の対立は必ず数年後の軍事的緊張に繋がって行くだろうと予測している。日本中の多数が日中戦争を侵略戦争ではなかったと認識し、南京大虐殺は幻だったと確信したならば、当然、日本は過去と同じ政治体制に戻り、過去と同じ行動を中国に対して仕掛けて来るからだ。態度が行動を決定する。態度は認識に規定される。それは韓国の国民も全く同じであり、民主主義国である韓国の場合は、すでに国民と政府の間で対日認識は一致している。3月の盧武鉉大統領のステートメントは実に重大なもので、小泉政権の反動性を明確に看破し、国民に対して日本軍国主義の復活への警戒を呼びかけたものであった。現在の日本はまだ軍国主義と呼べる政治的状態ではない。それは現象形態化していない。だが心の中で軍国主義は復活している。心の中が軍国主義になっている。

b0018539_12371766.jpg心が変われば態度が変わる。髪の毛を茶髪に染めた高校生が煙草に手を出すのに時間はかからない。昨夜の『ニュース23』の特集では、連邦議会と首相府の前の広場に巨大なホロコースト記念碑を建設したドイツの話が筑紫哲也によって報告されていた。墓標に見立てた約2700基のコンクリート柱が立ち、地下に巨大な資料展示館がある。あまりの規模の大きさと象徴性の強さに蒼然とさせられたが、筑紫哲也が語っていたとおり、これを日本に置き換えれば、まさに国会議事堂前の広場に南京大虐殺の巨大な記念碑を建立するのと同じであろう。戦争犯罪と謙虚に向き合い、それを自己克服することで欧州市民として未来を生きようとするドイツの決意と信念がよく伝わる。インタビューの相手は記念碑を設計した建築家だったか、未来と過去への責任という言葉を強調していた。「過去に目を閉ざす者は未来にも盲目になる」と言ったワイツゼッカーが来日して、日本の政府と国民に過去の清算への努力を呼びかけたのは95年、村山談話の年だった。あれから十年。あまりの彼我の差の前に愕然として言葉も出ない。

ユネスコ憲章の言葉を再び日本人のものにしよう。そのためにわが一票で政権を変えよう。
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by thessalonike | 2005-08-16 23:30 | 憲法 ・ 改憲 ・ 平和 (7)   INDEX  
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