本と映画と政治の批評
by thessalonike
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刺客作戦の陥穽 - その目的は「郵政民営化争点」の既成事実化
b0018539_1258215.jpg選挙戦術としての刺客作戦の目的は、単に人気のある刺客候補を立てて選挙で票を集めることではない。それは二の次だ。前にも述べたとおり、刺客戦術の本当の意味は序盤戦のマスコミ対策にある。テレビの電波を刺客作戦の情報で埋め、大衆の関心をその問題で浸し、他の政策争点に意識が向かないようにするのが真の狙いである。今月末の公示日を迎えるまでに、この選挙を「郵政民営化の是非を問う選挙」として既成事実化することである。郵政民営化問題を選挙の争点として押し固めて、二度とそれを覆せないようにしてしまうことである。有権者の投票選択を「郵政民営化に賛成か反対か」の選択に固定づけて、それ以外の選択判断をさせないように観念誘導することである。選挙の争点は公示日までにマスコミが「公式決定」する。だから小泉首相は、公示日までの一日一日の時間を周到に奪い取っているのだ。この大切な一日一日を、マスコミが年金問題や財政問題について報道をして有権者の関心を喚起させないように、三面記事の話題で選挙の報道を一色に塗り潰しているのである。



b0018539_12584862.jpg事前の世論調査では、有権者が関心があると答えた政策課題は、第一位が年金制度改革を始めとする将来の社会保障の問題であり、第二位が雇用対策を含めた景気回復のための経済政策であった。解散前は郵政民営化は第九位の順番にあり、小泉首相が解散演説をした直後でも、第三位から上の関心順位には上がって来なかった。国民は生活に直結した年金問題を第一に考えていて、年金改革と景気対策を政治に求めている。だが、そのニーズに正面から対応して選挙戦を戦えば小泉自民党は惨敗する。年金改革で民主党と論争すれば必ず負ける。昨年7月の参院選の二の舞になる。だから、年金や外交の問題は一切争点にしようとせず、郵政民営化という抽象的な旗印を選挙の争点に押し立てたのである。郵政民営化は政策ではなく象徴である。それを政策だと言うのなら、政策の中身は郵政公社を米国資本に売却するというだけの意味しかない。テレビに出ている小泉首相のイヌの評論家たちは、何の知識もないままに(あるいは嘘を知りながら)郵政民営化を「政策」だと宣伝し続けている。

b0018539_1259772.jpgもし小泉首相が刺客作戦を展開していなければ、報道番組では毎晩のように、年金を中心とした行財政改革の問題が議論されていただろう。昨年以来の年金問題の続きが専門家を交えて熱く討論されていただろう。年金論議はテレビ番組のコンテンツとしては地味で退屈を誘う話題ではある。しかしながら、複雑な数式や用語が入ってテレビ向けでないテーマであったにもかかわらず、視聴者の関心は高く、即ち国民の不安が大きく、視聴者は複雑な制度論議に食い入って聞こうとした。テレビで話す人間の言葉の意味やニュアンスを懸命に追いかけていた。自分の将来の生活に直結する生々しい問題だから、それを安易に聞き流すことはできないのだ。政府は昨年のボロボロの年金法案を国会に提出して以来、有効な制度改革に着手しないまま今度の総選挙を迎えた。政府は年金問題について事実上ギブアップの状態になっている。行き詰まるところまで行き詰まらせて、現行制度(給付体系)を自然死させようとしているようにも見えるし、増税以外の妙案がないので野党と国民の前で口を塞いでいるようにも見える。

b0018539_12593612.jpg小泉首相が本当に選挙に勝とうとするのなら、人寄せパンダの刺客芝居をテレビ演出して、民主党からの政策批判の露出機会を奪い取るのではなく、年金問題の専門家とか、財政問題のエコノミストを厳選して候補者に据えて、本当の意味での政策論議を国民の前に提供すべきだっただろう。すでにマスコミの一部と党内からは「やりすぎ」の声が漏れ始めている。演出政治が過剰になりすぎて、視聴者も食傷気味になってきたのである。だが、小泉首相はあと一週間はこの選挙戦術で時間を稼いで、民主党からの政策批判の「ノイズ」がテレビの画面に出ないように刺客作戦をヒートアップさせ続けるだろう。この期間中のテレビをこの話題と関心で占領して漬け込むことが目的であり、テレビで年金問題や社会保障を争点論議させないことが戦略なのだ。ニュース番組をワイドショー番組にして、国民に真面目に政策を考えさせないようにしているのであり、そしてバカな国民に郵政民営化を政策上の争点だと思い込ませることが真の狙いなのである。ただの象徴言葉への一票を政策への一票だと信じ込ませること。

b0018539_14352712.jpg解散直後に上げた記事で、私は民主党の圧勝を予想したが、その根拠や理由については詳しくは触れなかった。が、ここで思い出していただきたいが、昨年7月の参院選直前の段階でさえ、世論調査の政党支持率では自民党が民主党をポイントで上回っていたのである。けれども蓋を開ければ、結果は民主党の大勝で、比例では430万票、率にして8%の大差がついていた。事前の政党支持率の数字は必ずしも選挙結果に直結しない。それは何故か。それが選挙というものなのだ。コミットメントだからである。選挙の一票というのは国民一人一人にとってそれだけ重いものなのだ。一票を箱に入れてしまえば、あと四年間は政治を変える機会を持てない。政治参加できない。投票はコミットメントなのであり、無責任な笑い話や他人事で済ませられる問題ではなく、後で後悔をしてはならず、自分との対話に決着をつけた決断なのだ。選挙で各自が向かい合うのは、候補者や政党であると同時に、まさに自分自身の心である。自分自身を騙すことはできない。自分の将来生活をワイドショーの低俗な娯楽情報に賭けることはできない。

些事ながら、ブログランキングで第1位になりました。この場をお借りして皆様に厚く御礼申し上げます。
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by thessalonike | 2005-08-18 23:30 | 郵政民営化 ・ 総選挙 Ⅰ (15)   INDEX  
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