本と映画と政治の批評
by thessalonike
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郵政民営化とは本当は何なのか - 公社分割と株式売却の中身
b0018539_12161220.jpg公示日を迎えて選挙戦は事実上終盤に入ったが、マスコミの調査報道では相変わらず小泉自民党の支持率が高止まりしたままの情勢が伝えられている。マスコミ報道で見る限り、「郵政民営化」は賛成論が圧倒的な世論となって反対論は異端として縮小する一方のように映るが、ネットの中では賛成論と反対論がそれなりに拮抗して議論されているようにも見える。私の印象だが、懼く8月8日の小泉解散演説を聴いて郵政民営化賛成の立場に身を置いた者でも、それが「改革」の経済政策としてなぜ妥当で有効なのかについて得心できる中身が埋められてないのだろう。一方で反対論の外資買収説の説得力もそれなりにあり、すなわち自分で理論的納得の均衡を図り、「小泉支持」の立場的正当性を自己確信するべく、ネットを検索して中身のある賛成論と反対論をサーベイし、ベリファイしているように見える。賛成派の人間でも、実のところ「郵政民営化」が本当に何なのかは正体が見えておらず、訝る気持ちは消えてないのだ。



b0018539_12162636.jpgこれは二つ原因がある。一つはマスコミが反対論者の専門家をテレビ出演させず、視聴者である有権者が中身のある反対論に接することができていないために、自分自身の中で反対論の合理的輪郭とそれへの反論が準備できていないからだ。小泉支持で立場を決めた人間は、郵政民営化反対論に対して具体的に反駁し否定する論拠を自分の中に確実に持ちたいという欲求があり、投票までに論点をスッキリさせて始末を着けておきたいと思っているはずなのだが、本来、それを古館伊知郎や福留功男の前で整理して議論するべき金子勝や内橋克人がテレビに出て来ないので、反対論者がなぜ郵政民営化に反対するのか理論的な理由が腑に落ちていないのである。結局のところ、郵政民営化反対の表象は共産党や国民新党の異端に集約されて、その理由も「過疎地のネットワークの維持」というような弱者保護論に矮小化されてしまうところとなり、「反対のための反対」の印象を糊塗されて、議論の立場的優勢を失ってしまった。

b0018539_12163914.jpgもう一つの原因は、小泉自民党の郵政民営化断行論の側においても、なぜ郵政事業を民営化しなければならないのか、それを具体的に説明していないことである。竹中平蔵はこの政策立案の責任者であり、経済学者なのだが、解散後に幾度もテレビ出演しているにもかかわらず、郵政民営化の中身については何も論じていない。一年後、二年後にどう変わるのか(反論に耐える形で)説明していない。ただ「官から民へ」と「全ての改革の入り口」のスローガンを繰り返しているだけである。これは小泉自民党の今回の選挙戦術であり、抽象的なスローガンの連呼で有権者の感情に訴えて票をさらい取ろうというのが方針だから、専門家の竹中平蔵であっても、民営化の具体像を開示してそこで批判を浴びるわけにはいかないのだ。論戦の場はすでに国会ではなく、論戦の目的が変わっていて、票を奪うことだけが目的である。竹中平蔵がテレビでやっているのは郵政民営化の政策説明ではなく、反対論を捻じ伏せる揚げ足取りである。政策論ではない。

b0018539_12421775.jpg選挙戦の序盤、竹中平蔵が菅直人に向かって言ったのは「民主党は郵政民営化に賛成なんですか反対なんですか」の一点張りであり、そこから民主党の立場を崩して行くディベート攻勢だった。民営化すればどのように日本経済が景気回復するかの具体的な道筋は論理的に説明しようとしなかった。民営化後の資金がどのように流れるかについては、それが視聴者が竹中平蔵からいちばん聞きたかった問題だったが、一言も言わずに、民主党の曖昧さを衝くディベート戦術で終始した。結局のところ、民主党はこの論戦に負けて、押し切られるように郵貯簡保の段階的縮小とか郵政民営化の流れは賛成などと言うようになる。傍目から見ると、菅直人と小沢一郎の二人がマスコミと世論の勢いに臆して民主党の郵政議論をズルズルと後退させ、小泉自民党に背を向けて逃げた感じがする。解散直後の岡田克也はもっと積極的に郵政民営化反対の弁を立てていたし、議論も菅直人より先鋭で迫力があった。私は菅直人より岡田克也を買う。

b0018539_1217324.jpg郵政民営化とは実際のところどのような政策なのか。テレビ報道はプロパガンダしかやらないが、ネットの中にはその実像を抉出している情報が幾つもある。だがそれらを読むよりも、いちばん分かりやすいのは、何故(これまで一度も投票もしたこともない)堀江貴文が今回の選挙に立候補して「郵政民営化」をエバンジェライズしているかという問題を考えてみることだろう。その答えを自分で出せば、郵政民営化とは何かが一瞬で理解できる。難しい金融理論を捏ねなくても、堀江貴文の行動が郵政民営化の本質を世間に暴露していると言えるはずだ。郵政民営化とは郵政公社を分割して、その株式を民間企業に売却することである。350兆円の金融資産は政府ではなく誰かの手中に入る。兆単位の郵政公社株を買うカネを動かせるのは外資だけだ。公社株売却にあたっては、何社にも分割して売却するだろう。簡保と郵貯の二分割ではなく、郵貯の230兆円が何社にも分割されるに違いない。私の予測では、懼く新規に受け皿会社を何社か作るはずだ。

b0018539_12171341.jpg受け皿会社はハゲタカの姿が前面に出ると国民感情を害するから、表面はあくまで日本企業の体裁を整えるに違いない。ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー、メリルリンチ、リップルウッド、サーベラス、プルデンシャル、HSBC、UBSウォーバーグ、これら国際金融メジャーの中の数社が東京三菱銀行やみずほHDや三井住友銀行や野村証券や日本生命と提携して新規に受け皿会社を作るものと予想される。どのような組み合わせになるかは見えないが、匙を加減できるのはブッシュ政権と小泉政権の中枢だろう。その中に堀江貴文のライブドアも入れてもらうのである。これまでの経緯から考えれば、ライブドアはリーマンブラザーズと組むだろう。論功行賞。郵政民営化利権への参入である。民主党の岡田克也は政府の郵政民営化法案について、新たな利権の温床になる可能性があると何度も指摘してきた。だが、その利権の具体的意味についてはテレビでは明言しなかった。利権の中身とはこういう事である。簡単だ。誰が考えてもわかる。

で、問題はその受け皿会社が本当に資金を中小零細業者に貸付して、地域経済の循環や企業雇用の促進に貢献するかどうかだが、それも少し考えてみれば答えは簡単に出るはずである。ハゲタカならずとも堀江貴文社長がそんなお人好しの事業経営をやりますか。
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by thessalonike | 2005-08-30 23:30 | 郵政民営化 ・ 総選挙 Ⅱ (15)   INDEX  
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