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本と映画と政治の批評
by thessalonike

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球界再編考(3) - 堀江貴文のマーケは成功しているのか
球界再編考(3) - 堀江貴文のマーケは成功しているのか_b0018539_17544889.jpgソフトバンクの孫正義がホークス球団の買収に名乗りを上げ、いよいよ真打ち登場の大詰めとなり、プロ野球再編問題はさらに興味深い局面を迎えた。18日のTBS『ニュース23』のスタジオに孫正義が生出演して筑紫哲也と話していたが、正直な感想を言えば、先の若い二人とは違ってずいぶん印象がよい。議論が堅実で、頭脳明晰がよく伝わり、安心して話を聞いていられる。有能な経営者の語り口であり、自信と風格が漂っている。年齢差が開くとこうも人間が変わるのかと率直に思う。孫正義は、昔は危なっかしさと怪しさが際立った野心ギラギラの青年実業家だった。確かに若い頃から老成したインタフェースは備えていたが、それ以上に、人に安心を与えない殺気があり、表情や口調に妖怪の相を感じさせて、山師の印象が強かった。それが今は、年齢のせいと事業の成功と、それと引き立て役の二人の若輩のお陰で、すっかり貫禄と気品のある経営紳士に収まっている。買収は難なく成功するだろう。



球界再編考(3) - 堀江貴文のマーケは成功しているのか_b0018539_17551171.jpg孫正義は宮内義彦と繋がっている。今回の動きは宮内義彦や渡辺恒雄とも事前に謀った上での行動に違いなく、産業再生機構がホークス売却に動く前の抜群のタイミングを選んで流れを作った。政界でも官界でも、孫正義の今回の買収行動を邪魔する存在は考えられず、次に誰かが手を上げても負け役にしかなれない。ソフトバンクは今年の夏まではプロ野球の球団買収を否定していたはずなのだが、展開がこのようになった以上、その過去を穿(ほじく)り返して矛盾を責める人間は出ないだろう。再生機構が球団を売りに出し、誰か日本の会社が買うとなれば、孫正義のソフトバンク以上に適当な企業はない。落ち着くところに落ち着く感じがする。経営的にもライブドアよりソフトバンクの方が安心だし、孫正義と堀江貴文を較べれば、普通の人間の感覚なら孫正義の方に信頼を寄せる。

球界再編考(3) - 堀江貴文のマーケは成功しているのか_b0018539_17552792.jpg堀江貴文はベンチャー経営者だが、残念ながら垢抜けた印象が全然しない。三木谷浩史も同様で、遠慮容赦ない言葉を使わせてもらえれば、二人とも経営者よりもヤクザの人相と風貌に近い。ヤクザという表現が適当でなければ私集団の権力者とでも言えばよいか。内部で何如に絶大なワンマン権力を振るっているか、テレビカメラの前での言葉と顔つきでよく想像できる。社員や幹部たちは大変だろう。渡辺恒雄が傲慢と言っても、若いサラリーマンだった三十代の頃はあれほど極端ではなかったはずで、その点、堀江貴文と三木谷浩史の二十年後が思いやられる。孫正義を二人と分けているところは、やはりバークレーでビジネスとマーケティングを学んだ経験の差だろうか。孫正義は、企業家は人に頭を下げなければいけないことを知っているし、言葉使いも注意が必要なことを心得ている。

球界再編考(3) - 堀江貴文のマーケは成功しているのか_b0018539_17554569.jpgライブドアが仙台に新球団を興すのは会社の宣伝のためだと堀江貴文は言っている。だが、堀江貴文は根本的なところで何か大きな勘違いをしているのではないか。宣伝と言うのであれば、時の人となってテレビの報道番組に顔を出し、そこでの一挙一動を全国民の前に見せることが、実際には最大の媒体宣伝活動になっているに違いないのだ。コーポレート・ブランド・エクスポージャーとしてこれ以上の機会はなく、メッセージをマスにリーチさせるオポチュニティもない。その気になれば、彼は毎晩でも民放のニュース番組に生でゲスト出演することができる。そして、ブランドマーケティングには大きく二つの目的がある。一つは認知度の獲得であり、もう一つは好感度の調達である。ブランドマーケティングにおいては、この二つの数字が施策の効果測定の指標となる。マーケティングの常識だ。

球界再編考(3) - 堀江貴文のマーケは成功しているのか_b0018539_17555942.jpgいくら商品や会社の認知度を上げても好感度を得られなくては何にもならない。企業の媒体宣伝活動としては逆効果だ。ネガティブなイメージを散布している。本来ならスタイリストを付けてルックスのイメージアップを図るべきだっただろう。ノーネクタイのスタイルで通すならば、もう少しオーソドックスなシリコンバレー・カジュアルを意識するべき(ラルフ・ローレンでもポール・ステュアートでも)ではないか。そうすればスマートなITインダストリのリーダーのイメージが出る。それをせずに不恰好な我流を貫徹し続けているのは、ベンチャーとしての独自のマインドを示そうとする堀江貴文の個性の表現であるに違いない。確かにそれは不支持ばかりでなく、一定の支持もあるだろう。だが楽天との競争において決め手となるのは世論である。世論の支持とは多数の支持のことだ。状況的にはライブドアを応援したい気分が多数(デモス)の側にあっても、あれほど不遜で驕慢な態度を(31歳の若造に)見せつけられては、支持の声もか細いものになってゆく。これではライブドアは楽天に負けても仕方ないと思わせられる。堀江貴文のビジネスセンスを疑わざるを得ない。
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by thessalonike | 2004-10-20 22:35 | 球界再編 ・ 岩隈移籍考(10)   INDEX  
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