本と映画と政治の批評
by thessalonike
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カテゴリ:『アフターダーク』 (8)( 8 )
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村上春樹『アフターダーク』 (1) - 駄作か?        
b0018539_2112342.jpg一読した感想を正直に言えば、事前の期待が大きすぎたこともあるが、肩透かしを食らった印象が強い。ストーリーの内容も、文章の深みも、『海辺のカフカ』の作品水準と全く違う。『海辺のカフカ』の感動を期待して読む読者は、懼くその期待を裏切られる結果になるだろう。昨日、神田の東京堂一階売り場で本を買ったとき、通常15冊ほど積み置かれるはずの平積み一列で売られていた『アフターダーク』は、平積みの山がすっぽり窪んで、残りわずか二冊しかなく、谷間に沈んだ本の表紙を見つけたとき、前の男が一冊を取って行ったために、最後の一冊を手に取ってレジに並ぶしかなかった。その後で在庫から店頭に補充がなされたのかどうか。

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by thessalonike | 2004-10-07 22:30 | 『アフターダーク』 (8)   INDEX  
村上春樹『アフターダーク』 (2) - 登場人物の内面の浅さ
b0018539_2125297.jpg小説『アフターダーク』に物足りなさを覚えるもう一つの理由は、登場する人物にいつものような内面的な深みが欠けている点である。村上作品に特有の、主人公によるあの味わい深い省察と諦観がない。あるいは、準主人公の口を通して語られる時代への批判や主張の契機が弱い。だから『アフターダーク』の中では読者がストレートに感情移入できる人物が存在しないのだ。わずかに高橋の個性と言葉の中にいつもの村上作品の登場人物の香りを嗅ぐ程度だろうか。浅くて弱い。この点は読みながら読者が感じる違和感であり、読み終わって残るストレスと不足感だろう。本来の村上作品なら、その部分がもっと濃厚でインパクトがあるはずなのだ。

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by thessalonike | 2004-09-30 23:30 | 『アフターダーク』 (8)   INDEX  
村上春樹『アフターダーク』 (3) - その意図と隠喩    
b0018539_2155020.jpg『アフターダーク』の物足りなさについて言い出せばキリがないが、ひとまず登場人物の内面性の欠如と男女のセックス場面の不在について挙げた。いかにも村上春樹らしい作品であるようで、実は村上春樹らしくない。拍子を外された感覚は否めない。『アフターダーク』で感じるのは不足だけではない。不足感と同時に過剰感がある。過剰感の根拠は例えば姉エリの睡眠の描写で、あまりにページのスペースを取りすぎている印象がある。二つの場面や話をスイッチバックさせて章を交互にクロスさせつつ全体の物語を進行させ、最後に二つを一つに融合するのは村上春樹のスタンダードな手法だが、今回のエリの場合は話が空(から)で、寝ている場面の描写だけであり、スイッチバック進行のバランスがよくない。二つの話の展開の均衡がとれないのである。

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by thessalonike | 2004-09-29 23:30 | 『アフターダーク』 (8)   INDEX  
村上春樹『アフターダーク』 (4) - 若い読者との距離感
b0018539_2230931.jpgいま、カーティス・フラーの『ファイブスポット・アフター・ダーク』を聞きながらこれを書いている。昨日、銀座の山野楽器本店へ行って早速CDを買ってきた。店員がレジカウンターの横からすぐに取り出してくれた。『ブルースエット』は定番の商品だと言う。なるほど聞き覚えがある。いい曲だ。村上春樹は読者を裏切らない。外で雨が降る9月の静かな日に部屋の中で聞くのにいい。ジャズを聴くのはひさしぶりだが、懐かしく満ち足りた嬉しい気分になった。デニーズ、すかいらーく、セブンイレブン、ラブホテル、安価で粗悪で夢のない演出道具ばかりが揃え並べられた中で、このジャズの曲だけが、唯一、夢のある豊かで素敵なもののように思える。次はソニー・ロリンズの『ソニームーン・フォー・トゥー』を聴いてみよう。

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by thessalonike | 2004-09-14 23:30 | 『アフターダーク』 (8)   INDEX  
村上春樹『アフターダーク』 (5) - ツールとマニュアル
b0018539_22482819.jpgこの日曜日の午後、クルマを運転しながら某在京FM局を聴いていたら、偶然、村上春樹の話になって、音楽番組のキャスターから面白い情報が紹介されていた。『アフターダーク』の終盤の場面、セブンイレブンの店内で流れる曲の一つだったと思うが、スガシカオの『バクダン・ジュース』という曲名が登場する。そのスガシカオというミュージシャンが実は村上春樹に心酔する大ファンで、小説の中に自曲が挿入されて大感激しているという話題だった。ネットで調べてみるとやはり情報があり、スガシカオが村上春樹のファンであるだけでなく、村上春樹自身がスガシカオのファンであるという。こうなると読者はスガシカオを聴かないわけにはいかないし、スガシカオの音楽は爆発的に売れることだろう。コラボレーションと呼ぶにはあまりに非対称な販促プロモーション。

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by thessalonike | 2004-09-13 23:30 | 『アフターダーク』 (8)   INDEX  
村上春樹『アフターダーク』 (6) - 『ある愛の詩』の謎
b0018539_236327.jpg小説『アフターダーク』の中で一ヶ所だけ不審に感じた部分があったので、この機会に挙げておきたい。高橋とマリの会話の中で、米国映画『ある愛の詩』が紹介される件(くだり)である。

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by thessalonike | 2004-09-11 23:30 | 『アフターダーク』 (8)   INDEX  
村上春樹『アフターダーク』 (7) - 村上春樹は神である
b0018539_23343532.jpg近所のCDショップで今度はソニー・ロリンズを買ってきた。小説のラストで高橋が演奏する『ソニームーン・フォー・トゥー』。悪くはないけれど、素人耳にはやはりフラーの『ファイブスポット・アフター・ダーク』の方が心地よく聴こえる。ネットのブログにも『アフターダーク』に関する記事が増えてきた。玉石多い。よく読んでいる人は本当によく読んでいる。感心させられる。中でも驚いたのは、『アフターダーク』が五年前の村上春樹の短編の中で予告されていた小説だったという話で、ここまでの詳細を承知していた読者はほんの一握りだろう。村上春樹は誰もが読んで楽しめる。が、その読書の深浅の幅は本当に甚だしいものがある。私がコメントへの返信にわざとサザン・オールスターズや中島みゆきの名前を挙げたのは、実はそういう意味があって、村上春樹というのは、マス市場へのマス商品でありながら、受け取った顧客は決してそれを意識しないのだ。

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by thessalonike | 2004-09-09 22:30 | 『アフターダーク』 (8)   INDEX  
村上春樹『アフターダーク』 (8)- 神よ、天空から降りて人になれ
b0018539_23414011.jpg村上春樹には早くノーベル文学賞を取らせたい。現在、最有力候補の位置にあるのは確実で、いつ受賞してもおかしくないし、五年以内には間違いなく賞を受けているだろう。人には常にアクシデントがある。思いも寄らぬ病気もある。取れるものはなるべく早く取っておいた方がいいのだ。神である村上春樹に地上で残された最後の関心はそれしかあるまい。また、ここ十年ほどの村上春樹の行動を見ても、最終ゴールである賞取りのために着々と布石を打っているように傍からは見える。外国で売ろうとしているし、外国で評価を得ようと努めてきた。無論、それでいい。日本国内だけで売れる作家ではノーベル賞は貰えない。まず欧州、そして北米、それから中韓で読者を掴み、評価を確固たるものにする必要がある。作品の質として、村上春樹ほど文学たるに相応しく、ノーベル賞に相応しい作家は他にない。

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by thessalonike | 2004-09-08 22:30 | 『アフターダーク』 (8)   INDEX  
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