本と映画と政治の批評
by thessalonike
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カテゴリ:『ピアニスト』 (4)( 4 )
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仏映画『ピアニスト』(4) - 精神分析とエロティシズムの間
b0018539_17291741.jpgセックスはどこまでもどこまでも個人的なものである。性はそもそも、性の置かれた環境と状況が隠微で反社会的であればあるほど、その愉楽と興奮を内部に増幅させる性格を自然に持っている。性は日陰を好み日向を好まない。性は公然と社会的に定義されることを嫌い、外側からの視線を遮蔽した個人の裡に意味と祝福を隠し持つ。性は「鉄の檻」の牢獄に繋がれた現代人が、ほんの一時自然に還り、精神の均衡を回復する救済のオポチュニティであり、その時間と空間は何よりも貴重で神聖なものである。現代人は、飲み、食い、憩い、寝て、生命を再生産し、鉄の檻の中で生き抜くが、その中で性の占める意味はどこまでも重要で、疎かにできないものだ。現代人は都市空間のどこかに自分の性の隠し場所を確保する。エリカのポルノビデオ屋のような、自分の性の隠れ場所をひそかに確保して立ち寄りを続ける。

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by thessalonike | 2004-10-14 23:52 | 『ピアニスト』 (4)   INDEX  
仏映画『ピアニスト』(3) - エリカは本当に性倒錯者なのか
b0018539_18363198.jpg倒錯性愛あるいは異常性癖をテーマにした映画はヨーロッパに多い。だが、この『ピアニスト』の場合は、ある意味で筋金入りと言うか、かなり確固たる思想的主張があって、たとえ世界中の多数がこの映画に対してネガティブな反応を示したとしても、監督のハネケはそれによって動揺するということはないようである。場面や展開も普通の感性や常識での予想を裏切るものであり、単純な娯楽として鑑賞できる作品ではない。この映画の主役はイザベル・ユペールが演じるエリカと言うよりも、むしろミヒャエル・ハネケ監督自身であり、観客はハネケ監督が見せる不条理きわまる話の展開に翻弄され続け、最後に無情かつ冷酷に放り捨てられる。取り付く島がない。ヨーロッパ的なセンスの極致の映画であり、この作品にグランプリを授与するカンヌ映画祭の審査と決定そのものが、実にラディカルで浮世離れしていると言える。

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by thessalonike | 2004-10-13 22:13 | 『ピアニスト』 (4)   INDEX  
仏映画『ピアニスト』(2) - 男性優位主義への挑戦なのか
b0018539_18113568.jpg少し繰り返しになるが、あの問題のトイレのシーン。男はたとえ若くて健康な身体を持った者でも、否、若くて健全な体であればなおさら、あのような異常で不本意な状況に襲われたとき、間違いなく勃起した男性自身を萎縮させてしまうはずだ。それが正常な身体というものだ。性的にノーマルなワルターが、トイレの場面でエリカにあのような意外きわまる被虐を受けながら、なおかつ身体的興奮を維持して数分間エリカの命令に従い続けるという設定が私には納得できない。作品中のキーのシーンであり、主題に直接関わる部分でもある。もしワルターが勃起の維持を可能せしめたとすれば、それはワルターの中に性的にアブノーマルな要素があったからという理由でしか説明できない。男の性は機械的なものではなく、性的興奮状態にある男性は獣であってもロボットではない。

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by thessalonike | 2004-10-11 20:38 | 『ピアニスト』 (4)   INDEX  
仏映画『ピアニスト』 (1) - ノーベル文学賞作家イエリネク原作
b0018539_17392362.jpg2001年のカンヌ映画祭グランプリ受賞作。原作者であるエルフリーデ・イェリネク女史が今年のノーベル文学賞を受賞したという一報に接して、あわてて台風が来る直前にDVDを借りてきた。だが正直なところ、この映画を批評するのは難しい。感想を表現する言葉を探すのに苦労するのだ。大人の映画であり、そして映画のメッセージは、受け手たる作品の理解者に、明らかに男よりも女を想定している。男は理解しにくい。序盤はいい感じで映像が流れる。セックスではなく、音楽こそがこの映画の真の主題ではなかろうかと思えるほど、音楽(ピアノ演奏)が前面に映し出されて、観客にヨーロッパの古典音楽の真髄をアピールする。エリカがワルターにアドルノのシューベルト論を講義する件(くだり)など、これは未熟な音楽知識では最後までついて行けないのではないかと怯(ひる)まされたりする。

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by thessalonike | 2004-10-10 23:28 | 『ピアニスト』 (4)   INDEX  
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