本と映画と政治の批評
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カテゴリ:ジュンク堂書店新宿店( 1 )
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ジュンク堂書店新宿店 - 「本」を定義し提案する空間  
b0018539_21242765.jpg新しく開店したジュンク堂新宿店は予想したとおり素敵な本屋だった。ここは自信を持ってお奨めできる。一言で言えば提案と発見の店。ジュンク堂書店の本来のコンセプトは、きっと三宮の店にあるのだろう。だから、平面面積を広く取れれば取れるほどジュンク堂らしい雰囲気の店が出来上がる。丸の内の丸善本店とは全然違う。広い店舗に較べて客数は少なく、ゆったりとした気分で本を見ることができる。図書館で本を探しているような気分になる。この点が本当に一番大事なところで、ジュンク堂が顧客に提供している最大で絶妙の商品価値だ。ナチュラルウッド素材の床面、落ち着いたライティング、書架と書架の間の距離、本の品揃え、どれも満足できる。いい感じだ。ジュンク堂書店は来店者のニーズを心得ていて、お客の心を楽しませるコツを知っている。ジュンク堂の中では基本的に客は一人で本に囲まれるスペースを持つ事ができる。誰にも邪魔されない空間を維持できる。この環境提供が大事なのだ。

b0018539_14544594.jpg私が新しい店で最もよいと思ったのは、エスカレーターを上がった七階正面の新刊コーナーである。来店者が最初に足を入れるスポット、来店者がジュンクの提案に最初に接する場所。ここがいい。新刊コーナーに何を陳列し、何を提案するかで書店の力量が基本的に決まる。東京の本屋で新刊コーナーが最も素晴らしいと評価されているのは神田の東京堂書店で、文芸と社会の二つのブースに画された新刊コーナーには、毎週一回、立花隆がチェックに訪れる。その噂を聞きつけて他の作家も真似して立ち寄る。昔(15年ほど前)は池袋のリブロポートの新刊コーナーも面白かった。今回のジュンク堂新宿店の新刊コーナーも絶妙で、私はとても嬉しい気分になった。量(点数)がある。多すぎず、少なすぎず。いい感じの配置と演出で新刊本がプレゼンテーションされている。私はパールの『ダンテ・クラブ』を買ったのだが、まさにジュンク堂の提案に説得されて商品を購入したという感じだった。

b0018539_19522562.jpgジュンク堂新宿店には大量の本が並べられているのだが、池袋の店もそうだけれど、ただ数だけ揃えて並べているという感じがしない。一点一点吟味されてアソートメントされている印象を受ける。本の市場全体というものをジュンク堂が確実に把握していて、生産者である出版社の動向と消費者である読者の需要をほぼ正確に捕捉して、最もセンスのいいバランスポイントで現実の市場(いちば)を形作っているように見える。数だけ捌いて売上と利益だけ上げればいいという商業主義的な姿勢には見えず、かと言って、本屋独自の偏狭な主観を来店者に押しつける印象がない。本についての確かな概念と定義を持っていて、それが消費者である読者を心地よく包みフリクションを起こさせない。提案を与え、発見を促す。よい書店というのは、要するに、そのとき自分が作りたい書庫(コレクション)を目の前で見せてくれているものだ。ここにある本を全部買い取って俺の部屋に飾りたいと思わせられる陳列の本屋が理想の本屋なのである。

b0018539_1455997.jpgそれは時代によって変化する。本の概念、理想の書庫は時間の経過とともに変わる。古いままの概念では駄目で、新しい時代をよく捉えた知性のものでなくてはならない。ジュンク堂新宿店八階の人文書を集めたスペースで、今回「カルチュラル・スタディーズ」と銘打たれた書棚を見つけた。池袋店や三宮店ではすでにこのカテゴライズが行われているのだろうか。私は初めて見て新鮮な気分を覚えた。カルチュラル・スタディーズの書棚が二つ並んであり、一つは「メディア研究」、もう一つは「ポスト・コロニアル研究」とタイトルされて分類されている。そのポスト・コロニアル研究とカテゴライズされた書棚の中にサイードや小熊英二が配列されていた。なるほどと頷きつつ、暫くその場を動けなかった。カルチュラル・スタディーズで書棚二列、その左横には「フェミニズム・ジェンダー研究」とタイトルされた書棚が二列。もう「社会科学」なんてタイトルは付けられていない。

b0018539_2124425.jpg時代と市場の変化をジュンク堂が捉えて概念し提案しているのだ。この書店には地方の書店経営者が多く調査に来る。このカテゴライズとタイトリングを見て、きっと参考にするだろう。ところで私はジュンク堂新宿店にも文句がある。七階はいいが、八階がよくない。八階のエスカレーターを上がった最も大事な場所、「社会評論」と分類されたスペースで、要するに丸善の一階と同じジャンク本の溜まり場だが、あれをエスカレーターの正面に持って来られるのは、ジュンク堂を贔屓するユーザとしては心が痛い。「人文書」ゾーンと「社会評論」ゾーンをチェンジすべきだ。そうすればジュンク堂らしくなる。コンセプチュアルになる。八階のフロア・ロケーションにおいて、残念ながらジュンク堂本来のコンセプトが崩れていて、売上と利益に媚びた配置になっている。出店前にこの件に関して内部で何の議論も無かったとすれば残念だ。メガストアだから市場のマスボリュームを意識するのは当然の道理だが、しかし八階正面のあれにはガックリとさせられるのである。
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by thessalonike | 2004-11-04 23:33 | ジュンク堂書店新宿店   INDEX  
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