本と映画と政治の批評
by thessalonike
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カテゴリ:『ハウルの動く城』 (8)( 8 )
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『ハウルの動く城』(1) - ストーリーの破綻、中途半端なメッセージ
b0018539_11285237.jpg期待して映画館に見に行った作品が失敗作だったので大いに失望させられた。『いま、会いにゆきます』への評価では、意外にも極端な少数派の立場に身を置いてしまったので、今回もまたかと心配になり、やはりネットの評判を覗き見たのだが、この評が的確で正鵠を射ている。最も大きな問題は(多くが指摘しているとおり)ストーリーの破綻だろう。物語が支離滅裂で全く内在的な理解と納得ができない。観客は感情移入したくてもソフィーにもハウルにも感情移入できない。最後まで苛立たしく感じさせられる。評者たちは二時間では短すぎると言っているが、私には二時間が長すぎて退屈だった。映像美ではこの物語の破綻の欠点はカバーできない。なぜなら観客の多数はアニメの映像を鑑賞堪能するためではなく、それ以上に宮崎駿の描くドラマのメッセージに共感するために劇場に足を運んでいるからだ。私はこの映画が欧米で高い評価を得られるとは思わない。

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by thessalonike | 2004-12-22 23:30 | 『ハウルの動く城』 (8)   INDEX  
『ハウルの動く城』(2) - ソフィーは本当にハウルを愛したのか
b0018539_10202144.jpgソフィーとハウルの愛の物語として注目しても、この映画の中途半端な印象は否めない。見る側にとって最もわかりやすい結末は、二人の愛が固く固く結ばれて、その愛の力によってソフィーにかけられた魔法が氷解して、ソフィーの髪の色が黒く元に戻ることだろう。ソフィーの愛によってハウルが失った心を取り戻し、ハウルの愛によってソフィーが奪われた若さを取り戻す。そういう素朴で簡潔なラブストーリーのエンディングをプレゼンテーションしてくれれば、観客も作品に首を捻ってあれこれ無用に言い散らす必要はない。ところが映画はそうはならないのであり、何やら二人は「過去」に出会った経緯があり、時間のズレを引き摺りながら愛し合っているという複雑で微妙な設定になっている。時制をドラマの仕掛(タネ明しの装置)として使う演出は『千と千尋の神隠し』でも使われていた。前作ではその演出がまずまず自然に受け止められたが、今回は後半のドタバタが続く中でその鍵になる大事な逸話が漏らされるので、腑に落ちる感じがせず、逆に違和感を覚えてしまう。

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by thessalonike | 2004-12-21 23:30 | 『ハウルの動く城』 (8)   INDEX  
『ハウルの動く城』(3) - キャラクターの意味づけの不安定さ
b0018539_1330161.jpg今回も宮崎アニメらしい魅力的なキャラクターが登場して、それだけで十分楽しめたと満足している宮崎駿ファンも多くいる。だが、キャラクター設定について率直なところを言えば、ドラマの中での役割配置が不明瞭で、ストーリーの混乱に拍車をかけている印象を否めない。全てはストーリーの破綻という一点に収斂する問題だと思われるが、個々について具体的に述べてみよう。例えば荒地の魔女、このキャラクターはどう説明すればよいのだろう。最初は恐るべき悪魔である。観客が感情移入しようとしている主人公ソフィーに理不尽に魔法をかけ老婆にしてしまう。ソフィーを不幸のどん底に突き落とす。ソフィーは生活を失い、憐れにも家を捨て町を出る。ここまでは立派な悪役なのだが、王宮に招請されてソフィーと一緒に階段を上り始める前後からキャラクターのポジショニングがチェンジし始め、ソフィーの操縦する飛行機に乗ってハウルの城に飛び込んで来てからは、魔女の能力と性格を失って只の要介護老婆となり、被扶養者としてソフィーの家族の一員になる。

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by thessalonike | 2004-12-08 22:30 | 『ハウルの動く城』 (8)   INDEX  
『ハウルの動く城』(4) - 暗喩と象徴             
b0018539_1319495.jpg宮崎アニメの批評だから、作品が象徴するものを論じなければならない。宮崎作品の魅力は映像そのもの以上に意味を考えさせるところにある。意味を考えさせてくれるから宮崎作品は面白く、観客の知性を刺激するのであり、そのことが宮崎駿のインテレクチュアルとしての高い評価にも繋がっている。ところが豈に図らんや、今回の『ハウルの動く城』には特に暗喩と象徴を考えさせてくれる材料がなかった。インパクトが弱いのである。何が何を意味しているのか、誰が何を象徴しているのか、監督の意図と主張はどこにあるのか、それがよく分からない。ネットの中ではジブリファンが宮崎監督を代弁して「愚衆」に向かって見下げた口調で解説を垂れているのだが、どの説明も適当な牽強付会の印象を免れず説得力が弱い。何と言っても今回の作品では宮崎監督本人が口を開いていない。監督がプロモーションのフロントに立っていない。前作のテレビ広告では、宮崎駿自らが自分の言葉で「みんなの中にもカオナシはいます」とメッセージを投げていた。

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by thessalonike | 2004-12-07 23:30 | 『ハウルの動く城』 (8)   INDEX  
『ハウルの動く城』(5) - 宮崎駿と資本主義的アニメ経営
b0018539_15561769.jpgテーマもメッセージも不明で不可解なこの映画を、宮崎駿は一体何のために製作したのだろう。現在、ネットでの評価は賛否両論真っ二つに割れている。否定派はストーリーの破綻を指摘して納得せず、肯定派は映像美を評価して満足すべしと主張する。公開が始まったのが今からニ週間前の11月下旬で、したがってこの娯楽商品のマスボリュームのカスタマが映画館に殺到するのは、試験休みから冬休みにかけてのこれからのシーズンになる。いまブログや掲示板にコメントを掲載しているのは、主に熱心なジブリファンや映画ファンの趣味の人たちで、言わばアーリーアダプターのセグメントに所属する部分なのだろう。この時期にこの客層で評価が分かれている事態に直面して、あるいはスタジオジブリや日本テレビの関係者は危機感を持ち始めているのかも知れない。果たして興行成績で目標となる前作に並ぶことができるのだろうか。原作の『魔法使いハウルと火の神』は早速ベストセラーになって、書店のランキング上位に躍り出た。

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by thessalonike | 2004-12-06 23:30 | 『ハウルの動く城』 (8)   INDEX  
『ハウルの動く城』(6) - ブランドとしての宮崎駿     
b0018539_125401.jpg前回、手塚治虫と宮崎駿についてを試みてみた。現在の宮崎駿の地位と境遇は、きっと手塚治虫が生前夢見ていたものを達成した姿と言えるのだろう。アニメ映画の商業的確立と全世界への配給。文化としてのアニメの世界的規模での市民権の獲得。記憶では手塚治虫はアニメ映画(『千夜一夜物語』か『火の鳥』か忘れたが)で事業に大失敗して虫プロを倒産寸前に追い込んだ経緯と蹉跌がある。コミックとテレビの世界では成功して巨匠となり、先駆者としてインダストリーを築き、偉大なカリスマ的存在となったが、渾身の情熱とエネルギーを注いだ映画ビジネスだけは遂に成功させられず、無念を残して60歳の人生を終わった。その手塚治虫の遺業を見事に完成させたのが宮崎駿である。その意味で宮崎駿を手塚治虫の後継者と呼ぶのは誤りではないし、生涯をトータルした業績の面では宮崎駿は手塚治虫を追い抜くだろうし、文化勲章も間違いなく受賞するだろう。今後の海外でのジブリの事業展開とアニメ文化普及の如何ではノーベル文学賞の可能性すらある。

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by thessalonike | 2004-12-03 23:30 | 『ハウルの動く城』 (8)   INDEX  
『ハウルの動く城』(7) - 星の湖の効果音はレマン湖で録音
b0018539_14155094.jpg『ハウルの動く城』についての論議が続いている。公開からずいぶん時間は経ったが、作品への評価は特に好転した様子はない。ネットの掲示板では「二度以上見るべき」論が以前とくらべて少し減ったように感じられる。初期のコメント投稿者は熱狂的なジブリファンも多かったのだろうが、読売グループが世論操作のために積極的に動員をかけていた印象も拭えない。宮崎アニメはビッグインダストリーであり、下働きするサラリーマンから始まって、出版社、評論家、大学の助教授まで、『ハウルの動く城』でこの冬のボーナスを手にしている頭数は実に多い。三年に一度の稼ぎどきなのである。が、宮崎アニメの「二度見て当然」神話も、今回の作品で翳りを見せることになるかも知れない。感動的な作品だからこそ「二度見て当然」なのであって、わかりにくい作品を理解し解釈するための「二度見て当然」なのではない。そう考えるお客はいない。そこまで行けば、まさに宗教の話になってしまう。映画は基本的に一回勝負の娯楽なのだ。

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by thessalonike | 2004-12-02 23:30 | 『ハウルの動く城』 (8)   INDEX  
『ハウルの動く城』(8) - 「宮崎駿の世界観」について  
b0018539_11113673.jpgハウル論議の中で気になる問題が一点あったので、この機会に触れておきたい。それは宮崎駿と『ハウルの動く城』を評価する上で、「世界観」というキーワードが頻繁に使用されていることだ。曰く、「宮崎先生の世界観の勝利」とか、「宮崎作品の圧倒的世界観」とか、「宮崎さんの世界観は好きですが」とか..。そういう表現のコメントをよく見かける。気になるのは、世界観の単語を用いて宮崎駿を評価している人たちが、世界観という日本語を正確に理解して使っているのかという問題もあるのだけれど、それ以上に、果たしてこの人たちが言っている「宮崎駿の世界観」とは一体どのようなものを想像しているのかという問題と、また「宮崎駿の世界観」というような言い回しが一体どの辺りから始まって、誰が言い出したのかというオリジナルソースの問題である。世界観という言葉が付けられて作品や作者が評価される例は最近の日本では非常に少ない。逆に二十年前までは日本人はこの言葉を好きでよく使っていた。

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by thessalonike | 2004-12-01 23:30 | 『ハウルの動く城』 (8)   INDEX  
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