本と映画と政治の批評
by thessalonike
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三位一体 - 東京裁判、南京大虐殺、昭和天皇の戦争責任
b0018539_16472779.jpg東京裁判』上下巻(朝日新聞東京裁判記者団著)は、実は今から20年以上前の1983年に、講談社から出版と同時に購入していたのだが、これまで一度も頁を開くことなく書棚に封印したままだった。森岡発言の事件があり、東京裁判について何事か考えてみようという気分になり、今回初めて本を繙く機会を得た。蒙を恥じるばかりだが、本を買ったのは、このときドキュメンタリー映画の『東京裁判』(小林正樹)が製作、封切されて話題になっていたからである。当時を反省して振り返れば、東京裁判にしても南京大虐殺にしても、特に複雑な歴史世界に踏み込んで研究しようという知的欲求や問題意識は持っていなかった。それはすでに整理がついた現代史の問題であり、殊更に詳細にその周辺の知識をストックしたり、豊かなイメージを保有する必要を感じなかったのである。年齢も若く、もっと他の世界に知的関心が向いていた。それは掘り下げて考えてみれば、戦後民主主義の幸福な太平洋高気圧の下で、私自身と日本人が平穏に生活していた状況を意味する。

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by thessalonike | 2005-05-30 23:30 | 東京裁判 ・ 南京事件 (10)   INDEX  
東京裁判の有効性を担保する二つの法理 - ポ宣言と通例犯罪
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森岡正宏厚生労働政務官は26日の自民党代議士会で、小泉首相の靖国神社参拝問題に関連し、「中国に気遣いして、A級戦犯がいかにも悪い存在だという処理をされている。A級戦犯、BC級戦犯いずれも極東国際軍事裁判(東京裁判)で決められた。平和、人道に対する罪など、勝手に占領軍がこしらえた一方的な裁判だ。戦争は一つの政治形態で、国際法のルールにのっとったものだ。国会では全会一致で、A級戦犯の遺族に年金をもらっていただいている。国内では罪人ではない。靖国神社にA級戦犯が祭られているのが悪いように言うのは、後世に禍根を残す」などと発言、参拝取りやめを求める中国などを批判した。この発言について、細田官房長官は同日午後の記者会見で、「政府の一員として話したということはあり得ない」と述べた。その上で「事実関係には種々誤りも含まれ、論評する必要はない。(東京裁判の結果については)日本として受諾したという事実がある」と指摘した。  (26日 読売)


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by thessalonike | 2005-05-27 23:30 | 東京裁判 ・ 南京事件 (10)   INDEX  
森岡発言の政治 - 用意周到な情報工作と責任不問の既成事実
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中国外務省の孔泉報道局長は27日、談話を発表し、森岡正宏厚生労働政務官が「(A級戦犯は)日本国内ではもう罪人ではない」と発言したことなどに対し「強烈な憤慨」を表明した。孔報道局長は森岡政務官の発言を「個人的でも、偶発的でもない」と指摘。小泉政権への不信感を強めていることを示しており、中国が今後、対日姿勢を一層硬化させる可能性が高い。局長は発言を「国際正義と人類の良識に対する公然たる挑戦」と非難。「日本軍国主義の野蛮な侵略によって被害を受けた国民の感情を深く傷つけるものだ」と激しく反発した。その上で「東条英機(元首相)をリーダーとするA級戦犯は世界平和と人道に対する歴史的罪人」と断定し、極東軍事裁判(東京裁判)の結果を「戦後国際政治の基礎」と、断固として尊重していく立場を強調した。また「日本は国際社会で責任ある役割を演じられるのか疑問だ」と述べ、日本の国連安全保障理事会常任理事国入りを強く牽制した。(27日共同)


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by thessalonike | 2005-05-26 23:30 | 中国の反日デモ (10)   INDEX  
内政干渉論の荒唐無稽 - 86年の『中曽根書簡』と後藤田談話
b0018539_1128790.jpg靖国参拝に対する中国の批判が内政干渉であるという主張は明らかに誤った暴論である。小泉首相の口からこのような非常識な強弁が飛び出して、それがマスコミや世論の批判を受けないまま放置されている現状こそ、まさに現在の日本の異常で倒錯した政治状況を示している。この問題は重大な国内問題であると同時に今日の日本における最大の外交問題であり、また世界の耳目を欹てている国際政治のホットイシューである。靖国問題への外国からの批判を日本の首相が内政干渉の論理で反論したことは、私の記憶ではこれまで一度もない。歴代政権において靖国問題は常に大きな外交問題であり続け、時の政府は事態の収拾に追われ続けてきた筈だ。靖国問題は郵政民営化とか年金問題のような内政問題とは根本的に異なる国際政治問題であって、これを内政問題だと言い逃れるのは詭弁であり、個人の内面の自由の問題だと言い抜けるのは欺瞞である。靖国参拝は憲法違反であると同時に国際法違反行為なのだ。

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by thessalonike | 2005-05-25 23:43 | 靖国問題 (10)   INDEX  
非礼は中国なのか日本なのか - 参拝強行すれば拒否権発動
b0018539_9513832.jpg呉儀副首相会談キャンセル問題の余波が続いていて、日本側の「非礼」抗議に対して、中国側は帰国の理由は公務ではなく靖国問題であったことを認めた。事件の真相は後になって明らかになるだろう。非礼は中国なのか。本当は非礼は日本の方だったのではないのか。呉儀が来日し、小泉首相と会談が設定されたということは、その時点で会談後の記者発表の原稿が出来上がっていたということであり、日中関係改善について前向きな合意事項が双方で了解されたという意味である。そうでなければ呉儀副首相は絶対に日本へは来ない。中国首脳が来日する条件は、日本政府が靖国問題で中国政府の要求に理解を示して譲歩をすることである。靖国参拝の中止を明言せぬまでも、参拝実行が事実上不可能になる言葉を小泉首相が首脳会談の席で語ることである。そこまでの合意が裏で取れたからこそ、首脳である呉儀の来日が一年半ぶりに実現したのであって、そうした合意がなければ来日そのものがあり得ない。

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by thessalonike | 2005-05-24 23:30 | 中国の反日デモ (10)   INDEX  
呉副首相会談キャンセルの政治 - 安倍晋三と町村信孝の謀略
b0018539_111111.jpg呉儀副首相の経歴を見ながら、あらためて今回の彼女の訪日の持っていた意義の大きさと会談キャンセルの政治の深刻な意味を考えさせられる。呉儀副首相がどういう人物か、今回の事件があるまで私は全く知らなかった。首相の温家宝とか、外祖の李肇星とか、小粒揃いの現在の中国の指導部の中で、呉儀は異色の存在であり、中国政府の新しい顔である。WTOへの加盟とSARS問題の解決は彼女の最近の功績であり、その手腕が世界で評価されて、米国『フォーブス』誌の「世界で最も影響力のある女性トップ100」の第2位にランクされる結果となった。中国のWTO加盟とSARS収拾は世界が注目した大問題であり、その二つをやり遂げた呉儀を欧米のメディアは注目して見ていたわけだ。日本ではこれまで無名の存在であり、今回が呉儀の日本デビューだった。切り札である呉儀を送り込んだことは中国の並々ならぬ決意を示すものであり、懼くだが、中国は彼女にWTOとSARSに続く三つ目の難問解決の機会と栄誉を与えて、世界のメディアの前で存在を輝かせるつもりだったのだろう。

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by thessalonike | 2005-05-23 23:30 | 中国の反日デモ (10)   INDEX  
日中戦争の歴史認識(6) - 日本軍にとって都合のいい「実証」
b0018539_11411765.jpg秦郁彦の『南京事件』を読みながら、読者が何か不自然な感想を抱くのは、秦郁彦が日本軍の蛮行を非難しながら、一方で何故それが起きたのかを探る原因分析の中で、日本軍の虐殺行為を現場の状況として不可避的のものだったように描き、結果的に日本兵の虐殺や強姦を免責する筆致になっていることである。状況的に仕方のない事件だったという論調になっていて、虐殺を実行した者たちの加害責任を追及する視角になっていない。例えば捕虜収容の方針と対策の欠如とか、日本軍そのものの補給の不備とか、軍のシステム上の欠陥のように原因説明がされていて、そうした組織上の条件が整備されていれば虐殺事件は発生しなかったかのような見方が示されている。こういう書き方は欺瞞であろう。日本軍は最初から中国兵は全て殺害する方針で侵略戦争に臨んでいるのであり、兵士のみならず住民も全て虐殺と略奪と強姦の対象なのである。虐殺はシステムの欠陥による偶然の事故などではなく、本来的なものであり、この侵略戦争の性格に本質的に根ざしたものだった筈だ。

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by thessalonike | 2005-05-20 23:06 | 東京裁判 ・ 南京事件 (10)   INDEX  
日中戦争の歴史認識(5) - 秦郁彦の方法的欠陥と自己矛盾
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それでも中国側が従来から主張している三○万-四○万の数字とのへだたりは大きい。(略)また数字の根拠を当ると、数少ない生存者の記憶による証言がほとんどで、故意にふくらませたとも思えず、被害者心理にありがちの誇張に由来するもの、と見当がつく。(南京市文史資料)研究会の方もカットする具体的根拠がないので、そのまま採用したのであろう。(P.214) 人口統計もしっかりしてないうえ、「白髪三千丈」の伝統を持つ中国のことだ。悪意はなくとも、数字がふくれあがるのはやむをえまい。(P.205) 悪意はなくとも「白髪三千丈」式にふくれあがったまま現在に至っている。(P.207) 従来の研究書には、被害者である中国側の証言や主張を軸に組み立てたものが多く、全体像が見えにくくなる傾向があった。そこで、本書では加害者である日本側の戦闘詳報や参戦者の日誌など、いわゆる第一次史料を軸として構成し、日本側でも後になって書かれたり語られたいわゆる第二次史料は、原則として補足、参考の範囲で利用するにとどめた。(P.243 秦郁彦 『南京事件』)


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by thessalonike | 2005-05-19 23:15 | 東京裁判 ・ 南京事件 (10)   INDEX  
日中戦争の歴史認識(4) - 南京大虐殺の犠牲者の数について
b0018539_21361587.jpg南京大虐殺の歴史は犠牲者の数が本質的な問題ではないと思うが、一般にブログや掲示板で四万人説を主張する者がその論拠とする秦郁彦の『南京事件』を一読したかぎりでも、どうやら本当の数はもっと多かったのではないかという印象を自然に持つ。秦郁彦自身が「筆者が約四万人と概算した被害者数も、積み上げ推計に基づいているだけに、新資料の出現で動くことになるかも知れず、あくまで中間的な数字にすぎない」と語っており、また積算方法そのものが読者をよく納得させられるものではないからだ。相当な計算除外がある。秦郁彦の四万人説の内訳は、住民虐殺が一万人で捕虜虐殺が三万人である。これはスマイス調査をベースにした推計なのだが、そのスマイス調査の中身については、信頼性の検証も含めて、本書の中で特に詳しく紹介されていない。犠牲者の数の問題で引っ掛かりを覚える点の一つが埋葬死体数十五万五千体という数字(P.212)であり、これは紅卍字会および崇善堂という民間慈善団体による記録であるが、埋葬死体数だけでも秦郁彦の数字の四倍に上る。

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by thessalonike | 2005-05-18 23:19 | 東京裁判 ・ 南京事件 (10)   INDEX  
日中戦争の歴史認識(3) - 秦郁彦『南京事件』の「あとがき」
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日本が満州事変いらい十数年にわたって中国を侵略し、南京事件をふくめ中国国民に多大の苦痛と損害を与えたのは、厳たる歴史的事実である。それにもかかわらず、中国は第二次大戦終結後、百万を越える敗戦の日本兵と在留邦人にあえて報復せず、故国への引きあげを許した。昭和四十七年の日中国交回復に際し、日本側が予期していた賠償も要求しなかった。当時を知る日本人なら、この二つの負い目を決して忘れていないはずである。それを失念してか、第一次史料を改竄してまで、「南京大虐殺はなかった」といい張り、中国政府が堅持する「三十万人」や「四十万人」という象徴的数字をあげつらう心ない人々がいる。もしアメリカの反日団体が日本の教科書に出ている原爆の死者数が「多すぎる」とか、「まぼろし」だとキャンペーンを始めたら、被害者はどう感じるだろうか。数字の幅に諸論があるとはいえ、南京で日本軍による大量の「虐殺」と各種の非行事件が起きたことは動かせぬ事実であり、筆者も同じ日本人の一人として、中国国民に心からお詫びしたい。この認識なしに、今後の日中友好はありえない、と確信する。 (P.244)


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by thessalonike | 2005-05-17 23:38 | 東京裁判 ・ 南京事件 (10)   INDEX  
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