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北朝鮮問題考(2) - 経済制裁をめぐる政治情勢
b0018539_1340429.jpg現在政府が検討している対北朝鮮経済制裁は、自民党拉致問題対策本部が今月初に出した中間報告がベースとなるものである。そこには五段階があって、具体的には次のような内容になっている。第1段階として人道支援を凍結・延期、第2段階で送金の報告義務の厳格化、第3段階で特定品目の貿易停止の措置、第4段階として特定船舶の入港禁止や貿易の全面停止、第5段階で船舶の全面入港禁止を想定。以前に言われていたような朝鮮総連の資産全面凍結とか、在日朝鮮人による本国への送金停止といった本格的な措置が含まれていない。最終段階の制裁内容ですら船舶の入港禁止のレベルであり、これは私が見たところ、北朝鮮にとって比較的受け入れやすい経済制裁であるという印象を受ける。すなわち中身よりも国家としての(国内世論と国際社会向けの)態度表明を重視した外交政策ではないか。



b0018539_13404110.jpgということは、恐らく山崎拓補佐官が事前に北朝鮮と根回しを始めているか終えているはずであり、世論の風向きを見て、さらに米国の事前了承を得た後で、人道支援(食糧援助)の凍結延期に踏み切って行くのではないか。深読みすれば、これは北朝鮮に対する圧力カードと言うよりも、むしろ国内世論向け、そして中国と韓国向けの強硬姿勢誇示(パフォーマンス)の意味が強いだろう。つまり北朝鮮にとっては折込済みの許容範囲の話なのだ。二年後の一兆円(日朝平和友好条約)から考えれば安い話である。北朝鮮からすれば、この日本による柔らかな経済制裁は、むしろ逆に有効なカードとして使える性格のものだろう。つまり、日本が経済制裁を発動するのは二年前の日朝平壌宣言違反行為(国際協約違反)であり、また今年七月の小泉訪朝時の約束に違反する違約行為であると非難する口実を北朝鮮に与える。

b0018539_13465991.jpgそして、その大義名分をもって六カ国協議からの日本追放を他の四カ国に訴え、言わば愚図る形で六カ国協議開催を引き伸ばし、中露韓を揺さぶって六カ国協議本番交渉での立場的有利、すなわち核放棄問題の条件闘争における米国の譲歩を迫って行くことができる。六カ国協議引き伸ばしについて、責められている立場から一転して逆襲する立場を獲得することができるのである。中露韓三国は当然ながら日本に経済制裁の撤回と緩和を求めて動くだろうし、駄々を捏ねまくる北朝鮮を宥める飴の準備に奔走しなければならない。こうして、日本の経済制裁の撤回か、さもなくば六カ国協議の中身での譲歩かという構図に持ち込むことができるのであり、すなわちこれは北朝鮮にとって有効な外交上のカードとなる。中露韓はひたすら早く日朝平和友好条約締結に持ち込みたいのであり、北朝鮮の孤立貧窮戦争政策を転換させて、平和改革開放政策に移行させたいのだ。

b0018539_13412466.jpg六カ国協議の枠組が崩れたら、再び二年前の米朝対立に戻って核戦争の緊張が再来する。日本の経済制裁の問題は六カ国協議と構造的にリンクしているのであり、日朝外交はそのまま米朝外交に連動する。新しい国務長官は、日朝間の駆け引きを読んだ上で日本の経済制裁の中身と時機について日本政府に指示を出すだろう。これは米国にとっても北朝鮮(と米朝の間に立つ中露韓)との駆け引きであり、もっと厳しくやってみろとか、今は様子を見ろとか、最終的にはライス長官が考えて判断する。強硬派で知られるライスでもイラク戦争の情勢を引き摺っている現在、極東で新しい緊張を起こす冒険に出るとは考えにくい。つまりアーミテージとケリーの敷いた六カ国協議体制をご破算にはできないわけで、ご破算にできない以上は北朝鮮が何でも口実にして駄々を捏ねられる状況は変わらない。駄々を捏ねる赤ん坊には飴をやって愚図るのを止めさせるか、時間をかけて泣きやむの待つしか手段がない。

b0018539_13414232.jpgそういう話を誰かから聞いていたのかどうか、実務者協議前の先週のTBSラジオ番組「アクセス」に出演した蓮池透が、あの男の発言としては珍しく「経済制裁をやっても効果がないのではないか」と外務省寄りの慎重姿勢のコメントを発していた。意外ではあったが、対北朝鮮経済制裁というのはここまで敵対的宣戦的性格を失って形式的政治的なものになっているのかと痛感させられた。拉致問題に関しては以前のような右翼ファナティシズムの影が明らかに弱くなっている。七月の(参院選対策の)訪朝後に救う会と家族会が小泉批判をやった際、保守世論からそれに対するカウンターバッシングが上がったことが契機になっているようにも見える。北朝鮮は、以前は「日本の経済制裁はわが国に対する宣戦布告と見なす」と言っていたが、今はそれを言わなくなった。そうした中、八人の拉致被害者が生存しているという心証は強まる一方である。
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by thessalonike | 2004-11-19 11:30 | 北朝鮮問題考 (10)   INDEX  
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