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北朝鮮問題考(4) - 経済制裁には核実験で対抗する
b0018539_11574199.jpg北朝鮮の外務省報道官が14日に談話を発表して、実務者協議で日本側が持ち帰った遺骨は本物であると主張し、さらに日本国内で北朝鮮への経済制裁の世論が高まっている動向に対して、「万一、制裁が発動されれば、わが国に対する宣戦布告と見なし、強力な物理的方法で即時対応するだろう」と警告を発した。今夜のNHKの7時のニュースも、きっとこの問題で一色に塗り潰されるに違いない。北朝鮮が日本の経済制裁に対して、それを宣戦布告と見なして対抗すると言明したのは一年半ぶりのことであり、昨年春に万景峰号の新潟寄港問題をめぐって日本の国内が騒然としたとき以来である。北朝鮮経済制裁関連法案(外国為替及び外国貿易法の一部改正と特定外国船舶入港禁止法)は、このとき国会に上程され可決成立している。が、そこから一年間の日朝関係は、六ヶ国協議の軌道が敷かれたこともあって比較的平穏な状態が続き、今年7月の小泉再訪朝と5人の拉致被害者の子供の帰還へと推移した。



b0018539_11575939.jpgその日朝関係が再び緊張の局面を向かえ、事態は今年7月の小泉再訪朝の以前に逆戻りした。残りの不明拉致被害者の問題を梃子にして外務省を揺さぶれば、こういう展開になるのは必至だったわけだが、救う会と安倍晋三は小泉内閣任期中の日朝国交正常化を何としても阻止する構えなのだろう。日本の経済制裁をめぐるアーミテージの発言がこの一両日で一転二転しているのは、外務省と自民党タカ派との間でアーミテージの「玉」を奪い合う熾烈な攻防が続いている政治の舞台裏を示唆している。アーミテージは確かに「玉」なのだが、それも今年いっぱいの話であり、年が明ければ新しい極東担当の国務副長官に職務を引き継いで自由の身になる。頭の中は次の身の振りで夢中であり、北朝鮮問題も責任意識が希薄になって、対応がコロコロ変わるのだろう。日本の外務省にも自民党にもいい顔をしてサービスをしているのだ。日本政府の北朝鮮経済制裁の諾否を最終的に判断するのはライス新長官である。

b0018539_11581583.jpg北朝鮮の「宣戦布告と見なす」発言の真意は六ヶ国協議への揺さぶりにある。これは日本ではなく米国へのメッセージであり、年明けの再開六ヶ国協議で米国に譲歩を迫る外交カードとして日本との緊張を利用しているのだ。すなわち六ヶ国協議体制からの日本排除の主張である。アーミテージが13日に日本の経済制裁に慎重な発言を示したのも、北朝鮮がこのカードを切ってくるのを牽制するためであり、日朝間が緊迫すると(苦労して組み立てた)六ヶ国協議体制の枠組が崩壊の危機に直面する。北朝鮮にゴネる時間を与えれば与えるほど、六ヶ国協議の目的である北朝鮮核放棄の目標達成が遠くなる。日本の経済制裁を米政権が容認するには、六ヶ国協議体制のリセットを視野に入れる必要があり、そうなれば米朝二国間の外交で北朝鮮の核問題を決着させなければならない。具体的に言えば、それは例の包括的提案の線で宥和するか、それとも米朝戦争(武力行使による金正日体制崩壊)に踏み切るかという選択になる。

b0018539_11583998.jpg「経済制裁は宣戦布告と見なして物理的方法で対応する」と発言した真意は、実はもう一つあるのではないかと私は考えている。それは六ヶ国協議体制を揺さぶる最も強烈なカード、すなわち核実験の強行ではないか。北朝鮮の核兵器開発疑惑が発覚したのは、拉致被害者5人が帰国して北朝鮮との間で「一時帰国」をめぐって揉め、国内で対北朝鮮強硬論が沸騰した二年前のちょうど今頃だった。その当時、評論家たちが口を揃えて言っていたのは、北朝鮮は寧辺の核施設に貯蔵している核燃料棒からプルトニウムを抽出して核兵器を製造するのに数ヶ月あれば十分だろうという見方だった。恵谷治や志方俊之がそんな解説をしていた記憶がある。その後、暫く核戦争勃発の恐怖の中で米朝間の熾烈な駆け引きが続き、六ヶ国協議体制に移行して核の緊張は一服した。しかし寧辺の工場から煙が上がったニュースや周辺での不審な爆発事故の報道があって、北朝鮮が秘密裏に核兵器開発を継続していることは誰もが確信している。

b0018539_2194416.jpg数ヶ月で核爆弾の製造に成功すると言われていたのだから、二年もあれば十分すぎる時間だろう。後はそれを核実験で証明するだけだ。日本の経済制裁は北朝鮮にとって核実験強行にきわめて好都合な口実となる。核実験か、あるいは新型弾道ミサイルの発射実験か、北朝鮮が談話で「強力な物理的方法で即時反応する」と語った物理的な報復とはその二つの実験を意味するのではないか。北朝鮮にとって、最終的なオブジェクティブは米国からの体制保証と包括的支援の二つである。その二つを得るためには核武装が絶対に必要であると金正日は考えている。金正日にとって六ヶ国協議は核開発のための時間稼ぎの外交機会であり、本音は米朝二国間の直接交渉とそこでの体制保証の確約に他ならない。米国が北朝鮮を体制保証すれば、米国の属国である日本との国交正常化も、それに付随した一兆円の経済支援も自動的についてくる。狙いは米国なのであり、核外交の基本は何ら変わっていないのだ。ライス長官はどう決断するのだろうか。

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by thessalonike | 2004-12-16 23:30 | 北朝鮮問題考 (10)   INDEX  
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