竹島問題(1) - 日韓関係の欺瞞を暴露した盧武鉉談話
b0018539_11331338.jpg盧武鉉大統領の3月23日の談話に関して、それを多少とも内在的に理解しようとする議論が日本のネットの中に見当たらないのは残念なことである。今回の竹島問題に関する談話発表に際しては、盧武鉉大統領も相当の覚悟と決断があったに違いないが、ラディカルな民主主義者である盧武鉉本来のスタンスが重大な政治的局面でエクスポーズされたものとして率直に評価したいと私は思う。一見して、盧武鉉は迷いながら大統領職をやっている。訪米した時も、訪日した際も、そこで発言する言葉は政治家盧武鉉個人のものではなく、韓国大統領の公式のものでなければならず、常に躊躇と逡巡があり、内面に葛藤と不本意があることを表情に窺わせていた。国家元首の立場と革新派政治家の思想との矛盾の中で呻吟し懊悩しているように見えたのである。信念と信条を本音で語らず、ずっと我慢して押し殺しているように見えた。



b0018539_11333071.jpg政治家盧武鉉の本来の思想的立場からすれば、先日の談話は当然なものであり、むしろ遅きに失したものであるとさえ言える。日本の極右国家主義の台頭と蔓延に対する警告と牽制は、隣国の指導者としてもっと早く宣言すべきだったと内心は思っているだろう。今回の談話の意義は、韓国の大統領が、日本の現在の政治状況を明確に覇権主義の復活として捉え、かつての超国家主義の原点に政府も国民も回帰しつつある事実認識を公式に表明した点にある。中国政府もそうだが、特に韓国政府は、ここ数年、日本の右傾化の現実に対して正面から対峙することを避け、「未来志向」の言葉に拠って、日本の外務省が巧みに誘導する友好演出のオブラートの方にコミットし続けてきた。過去ではなく未来に目を向けようという一般論の姿勢である。宥和的外交策だが、これが逆に日本に韓国を甘く見させる結果となった。

b0018539_11334594.jpg小泉首相の靖国神社参拝に対して、それを正面から強く批判してきたのは中国の方で、韓国はそれを一歩退いて看過している姿勢が目立った。日本の右傾化に対する韓国政府の認識が甘く、それを一過性のものとして楽観的に捉えていたように感じる。首相がタカ派の小泉純一郎から別の人間に変われば、靖国神社参拝もなくなり、往年の、例えば宮沢喜一の頃とか、あるいは近隣諸国との友好関係を重視した細川連立政権の頃のような、前向きな日韓関係に戻れるだろうと判断して待機していたのだろう。日本はすっかり変わってしまっているのである。あの当時、新党さきがけの幹事長として、従軍慰安婦問題を含む歴史認識問題の重要性を唱え、日韓日中関係の改善を党の方針として有権者に訴えていたのは若い鳩山由紀夫であった。現在の政治状況から見れば、当時の鳩山由紀夫の主張は明らかに左派のものである。

b0018539_1134365.jpgその鳩山由紀夫が今は胸に青バッジを光らせて、国会で小泉首相に向かって、なぜ今すぐに憲法を改正しないのかと恫喝する右翼政治家を演じている。野党民主党の外交防衛政策に関する基本方針はこの十年間で左から右へと大きく転換した。そうでないと票が取れない。国民の政治意識が完全に右にシフトしたのである。ネットで発言している多くの日本人は、韓国や中国の日本の右傾化に対する批判や抗議を、簡単に「反日」という言葉で処理して開き直ってしまう。昔(と言ってもわずか十年前だが)は「反日」などという言葉は誰もが簡単に口にするものではなく、一部の街頭右翼のアジ演説の中でのみ聞かれた気分の悪くなる政治用語だった。今はそれを誰もが当然のように使用して省みない。政治的な意味も含めて日常化している。右翼言語が日常言語となってブログの世界を闊歩している。

b0018539_11341776.jpg基本的なことを言うようだが、韓国や中国が日本の現在の政治に対して批判的なのは、かつて自国が侵略され植民地化された苦い歴史があるからである。ブログに横溢する現在の日本の多くの政治言説は、日本による過去の侵略戦争を正当化するものであり、戦後半世紀の間、日本人が内面で保持してきた反省の態度と思想を放棄するものである。過去の反省に対する否定。つまり侵略戦争に対する肯定。肯定するということは、悪いことではなかったのだからもう一度やっても構わないということである。韓国と中国がこれを拒絶し警戒するのは当然であり、反感を覚えるのは必然ではないか。今回の盧武鉉大統領の行動は、結果として、これまでの日韓関係の欺瞞を暴露した点で有意義であったと言える。竹島がどちらに帰属するかは双方に言い分がある。韓国側の主張が一方的に正当とは言えない。それこそ北尾吉孝的な大人の解決が求められるべきだ。
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by thessalonike | 2005-04-06 23:30 | 竹島問題・日韓関係 (8)   INDEX  
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