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本と映画と政治の批評
by thessalonike

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国連安保理をめぐる韓国の外交戦と戦後六○周年の世界
国連安保理をめぐる韓国の外交戦と戦後六○周年の世界_b0018539_15114887.jpg盧武鉉大統領が10日のドイツ訪問に先立って行われたドイツの有力日刊紙フランクフルター・アルゲマイネとのインタビューで最大の外交安保懸案である韓日関係、北朝鮮の核問題、南北統一問題などについて一歩踏み込んだ立場を表明した。 盧大統領はインタビューでまず、次第に激化している韓日両国の葛藤は日本側に責任があると断定した。

特に「日本の態度は人類社会が共に追求すべき普遍的価値にそぐわない」とし、「侵略と加害の過去を栄光と考える人たちと一緒に生きるのは全世界にとって大きな不幸」と強く批判した発言が目に付いた。 これまで盧大統領が数回に渡って述べた対日発言のうち、もっとも厳しい発言という意見に異論はない。

(朝鮮日報 「日本の態度は人類社会の普遍的価値にそぐわない」 2005/04/08 14:24)




国連安保理をめぐる韓国の外交戦と戦後六○周年の世界_b0018539_1440338.jpg戦後六十周年の今年は同時に国連改革の年でもある。また日露戦争百周年の年でもあり、同時に日韓基本条約四十周年の記念年でもある。国連安保理改革について、アナン事務総長は9月末の特別首脳会合までに大筋を固め、年内に新体制を決着させるべく動いている。現在、国連では6月中と予想されている「枠組み決議案」の総会採決に向けて、関係国の間で多数派工作が展開されていて、A案とB案をめぐる熾烈な攻防が続いている。国内では国連安保理改革(日本の常任理事国入り)について、これまで世論の関心は高くなかったが、韓国が一連の領土と歴史認識をめぐる問題の中で外交戦を宣言して、その一環として日本の常任理事国入り阻止に向けて活発に動き始めたために、俄然、この問題に対して世間の注目が集まるようになった。これは想像だが、韓国外交通商省の官僚たちは、まさに国事に一身を奉じるべき歴史的好機の到来として武者震いしていることだろう。

国連安保理をめぐる韓国の外交戦と戦後六○周年の世界_b0018539_14401469.jpg国連総会で「枠組み決議案」が上程される前に、二つの大きな国際外交のイベントがある。一つは5月9日にモスクワで開催される第二次大戦戦勝六十周年記念行事で、ブッシュ大統領をはじめ世界六十カ国の首脳が参加する予定になっている。行事の性格からしても国連の問題と密接に絡み、安保理改革について首脳たちが何らかのコメントを出す可能性がある。もう一つは、6月初に英国で開催される主要国首脳会議で、時期的に国連総会の直前となり、会議でもこの問題が議題に上るのは必至で、この時点で態度が微妙な国々の動向に関心が集まることになるだろう。同じEUの中でもドイツとイタリアはA案とB案で立場を分けている。日本とすれば、この席でイタリアを除く全首脳から「常任理事国入り支持」の強いエンドースメントを獲得して、総会での決戦に弾みをつけたいところだが、果たしてそのような展開になるかどうか。

国連安保理をめぐる韓国の外交戦と戦後六○周年の世界_b0018539_14402373.jpg「枠組み決議案」の情勢は微妙だが、9月末予定の特別首脳会合までの間には8月15日の終戦記念日がある。韓国では光復節、中国では抗日戦勝記念日。この日程が今年は例年以上に重要な外交問題になりそうな気配がある。歴史認識と国連改革の問題で日本と外交戦を演じている韓国とすれば、この機会を見逃す手はなく、たとえば中韓二国で戦後六十周年の共同宣言を発表し、日本の右傾化(覇権主義化)を強く警戒する声明を世界に発信する事態も予想される。大戦で日本軍の被害に遭ったアジアの国は他にもあり、シンガポールは歴史的な華僑大虐殺を経験しているし、フィリピンの民間人犠牲も少なくない。ベトナムは日本軍の仏印処理で大量の飢餓犠牲者を出している。この中韓共同宣言(仮)にシンガポールが加わったらどうなるだろうか。韓国の言う外交戦の主戦場はアジアであるはずだ。

国連安保理をめぐる韓国の外交戦と戦後六○周年の世界_b0018539_1440384.jpgこれまで8月15日にアジアの各国が政府レベルで連携して行動することはなかった。政府声明は個別のものであり、北朝鮮のような特別な例外を除いて内容も穏当な基調のものであり、日本を糾弾したり非難するものは特になかったはずである。日本への抗議集会は民間レベルのものに限られていた。今年からその風向きが変わるかも知れない。私が盧武鉉ならば8月15日に向けた共同行動を胡錦涛に呼びかけるだろうし、胡錦涛が迷ったとしても江沢民と唐家旋は中韓共同歩調を支持するだろう。盧武鉉と江沢民と唐家旋、この三人は一致できる。そこにシンガポールを入れることができるかどうか。仮に安保理改革の日程がズレ込み、8月を過ぎてもなお新体制の枠組が見えてこなかった場合、今年のAPECは11月に釜山で開催される。日本の歴史認識と右傾化をめぐる問題は、戦後六十周年の今年、中韓を超えてさらに広がる可能性がある。
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by thessalonike | 2005-04-12 23:30 | 竹島問題・日韓関係 (8)   INDEX  
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