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転換期の日中関係 - 中国における日本語世代と英語世代
b0018539_1173267.jpg反日デモをめぐる中国政府の対日強硬姿勢の背景や事情について鬱々と考えながら、強く印象を持ったのは、中国が大国として確固たる自信を持ったことである。中国政府は今回の反日デモの騒動について、日本大使館への投石と損壊も含めて、その責任は日本にあると明確に断言した。謝罪は言わず、遺憾とも言わず、損害賠償についても言及していない。小泉首相の靖国参拝に代表される日本の歴史認識の問題が、中国の国民感情を傷つけ、日中関係を悪化させている最大の元凶である旨を正面から主張している。これを見ながら、私は唐家旋と江沢民の最終的な怒りの爆発を読み取るのだが、この二人が一時的な感情や気分で政治をする単純な人間ではないことは明瞭で、冷静な情勢分析と長期的な展望に立った上での国策の決定判断であるように思われる。すなわち、これは日本からの今後の政府開発援助中止の受諾であり、そして大陸新幹線の日本仕様採用断念の通告である。



b0018539_1181295.jpg小泉政権はあと一年。安倍晋三が次の首相になればこの緊張関係がさらに続く。仮に民主党政権に変われば、小泉自民党の対中強硬路線を否定する形で日本が融和に動くだろう。そういう計算ができる。両方の可能性を考えたとき、中国にとっては小泉政権と無理に妥協して右傾化日本と調和をとる必要はない。どちらの場合でも財政難に苦しむ日本政府の対中ODA停止は不可避で、中国の方はODAと取引する政治的妥協の必要がなくなる。歴史問題について歯に衣を着せずに発言する自由を得る。名を捨てて実を取っていた方針を転換して、実を捨てて名を取る立場に立ったわけであり、それだけの経済的自信と財政的余裕を持ったことを意味する。数年前に米国におけるジャパン・パッシングという言葉が流行した。今後は中国におけるジャパン・パッシングが始まるだろう。日本をパスして米国と直接に組み合い、世界の政治と経済を運営する。そういう構図の選択へと一歩踏み出した。

b0018539_1184433.jpg中国の政治経済全般の運営について、国家のシンクタンクとなっているのは中国社会科学院であろうと思われるが、これまでこの部署で実力を持っていたのは、日中友好と改革開放時代に日本の大学に留学していた優秀なエリートたちであったに違いない。80年代の社会主義市場経済の建設においては、日本の戦後復興の経験がモデルとして措定され、精力的に理論研究された。ソヴェト連邦崩壊直前のペレストロイカ末期でもそういう動きがあった。日本の右翼は戦後日本を「社会主義」だと言って呪詛し卑蔑するのだが、中国はまさに、それを社会主義市場経済のモデルとして理念的に捉えて政策応用を実践したのである。現在の中国でテクノクラートとして成功し、組織の上に立っている人々は、ほとんど例外なく日本の企業や役所や研究機関と強い結びつきを持った日本語堪能な人ばかりと言って過言ではない。80年代の改革開放時代に日本とパイプを持って現場で実務を主掌していた人々である。

b0018539_1191323.jpg文化大革命で社会を廃墟にしてしまった後、中国には何も無かった。経済再建はゼロからのスタートで、下放から復帰してきた当時の若い優秀な学生たちが始めたのは、ラジオで日本語を聴いて日本語を勉強することだったのである。彼らにとって日本(日本語と日本の技術科学)は自分と国家の将来の成功が懸かったものだった。日本の技術を学び吸収し、日本の高度成長の成功を中国で追体験すること。中国人が文化大革命の後にやったことは、日本と組んで二人三脚で経済建設を推進することであり、それを指導したのは鄧小平であり、そしてそれは80年代を通じて見事に成功を収めた。テレビドラマ『大地の子』の基調もそこにある。文革が終わった1980年に30歳だった者は現在55歳。これから引退の時期を迎えてゆく。日本語で自己と国家を成功に導いた彼らは、いま何を思っているだろう。中国は経済大国になったが、日本の右傾化のために日中友好は遠い過去のものとなった。

b0018539_1192486.jpg現在の中国でエリートを目指そうとする者は、まず第一に英語であり、米国の大学に留学しなければならない。日本語は中国におけるエリートのパスポートの地位を失った。そして米国型の自由主義原理主義的なエコノミクスとビジネスに長けた人間が、これからの中国の社会を引っ張る新しい原動力となる。米国帰りの彼らには日本は最初から眼中にない。米国人と同じ意識で日本を見る。日本離れを加速させ、米中による新しい支配体制へと世界を変えて行こうとするだろう。中国には、日中友好と改革開放の時代に築いた、日本にとっての多大な無形資産がある。日本の現代文化への憧憬や日本製品への消費性向もその基盤の上にある。これらの無形資産は、日本にとっては、経済力を失ってもなお暫くは日本経済に外貨収入を与える原資となるものに違いないと私は考える。日本の中で、右翼国家主義の大勢と怒号に靡かず、日中友好と改革開放の時代の二国の真実を正視する若者が一人でも多く現れることを願う。

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by thessalonike | 2005-04-20 23:11 | 中国の反日デモ (10)   INDEX  
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