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鄧小平路線を越える新しい想像力 - 黒ネコ白ネコと対日重視
b0018539_1313761.jpg考えてみれば、中国の近現代史はまさに日中関係史であり、日本との関係の歴史という形でしか中国の近現代史はあり得ない。近代中国の父である孫文は亡命して神戸に滞在し、人民中国の母である周恩来は神田で苦学生の日々を送っていた。我々は現在の中国を中国たらしめている二人の偉大な革命家の日本経験の歴史を誇りに思うべきである。中国の近現代史において日本は一貫して卑劣な侵略者であり、日本軍国主義として描かれるべき悪役の存在だが、その一面において、同時に常にアジアの近代国家として文明のモデルを提供する先進国であり、中国の若い留学生が科学技術を学ぶべく海を渡って来る文明の配給地であった。それは魯迅の時代から始まって、改革開放の時代まで、一世紀にわたって変わらず続いてゆく。国是としての日中友好は中国にとってきわめて重い。それは周恩来と鄧小平が啓示した国策であり、現実にその路線を選択したがために今日の経済発展の成功がある。



b0018539_1316654.jpg中国の為政者の立場になって考えたとき、成功原理としての日中友好を簡単に放棄することはできない。周恩来と鄧小平に忠実たらんとすれば、畢竟、その先哲二名の原点に反省的に回帰する。唐家旋の日本語の堪能については前に論じたが、我々が思うべきは、この世界で、日本語ができる人間を外務大臣に据えている国が他にどこにあるかということだ。そんな国は中国以外に地球上に一国もない。王毅の外相就任はまず確実であり、我々は中国の対日重視を思い知るべきである。中国の国内には、日本の英検のような日本語検定試験の制度がある。現地を訪れるまで、私もその事実を知らなかったが、毎年それに数十万人が受験すると言う。そんな国は他にない。中国国内には、英語はできないが日本語はできるという人々が無数にいて、日本と関係する職に就いて働いている。世界の中で日本語が塵屑扱いされようとしている今日、中国のこの事実は日本人にとってどれほど励みになることか。

b0018539_1321860.jpg改革開放期の社会主義市場経済は、私の見方では、戦後日本の経済復興と高度成長をモデルとして、それをシンガポール的な開発独裁の政策手法で推進実現したものである。途上国が開発独裁のスタイルで経済発展を目指す場合、基本的に国民の政治的自由は制限される。それは決して共産党支配の国家に固有のものとは言えない。韓国も七十年代までは厳しい言論統制が敷かれ、また現在では躍進著しいブラジルなど南米諸国も、八十年代までは軍事独裁政権の支配下にあった。中国において共産主義は単に権力の独裁統治を正当化するためだけに機能していて、政権内部においても、況や一般庶民においても、その教義体系が個々の内面で支持され信奉されているわけではない。心は完全にコミュニズムから離れている。マルクス・レーニン主義も、毛沢東思想も、現在の中国の国家建設の路線とは根本的に背理する思想性であり、中国共産党指導部は矛盾した政治統治を仕方なくやっている。

b0018539_1322828.jpgマルクス・レーニン主義で国家を経営すればソ連型の計画経済が必然であり、毛沢東思想を原理的に実践すれば文化大革命の混乱しか結果しようがない。だから、現在の中国共産党が看板として掲げているマルクス・レーニン主義や毛沢東思想への帰依は明らかに虚構の装飾であり、幹部も国民もその欺瞞を明白に了解していて、誰もそれを党と国家の指針として本気で信用していない。実際にあるのは、中国を成功に導いた鄧小平の指導の経験だけであり、その経験から演繹導出される教訓と方針だけである。社会主義市場経済とは鄧小平の開発独裁路線の別名である。だから簡単に言えば、黒ネコ白ネコ理論と対日重視政策の二つのみが指導部の治国平天下を媒介する政治指針であると言える。鄧小平の国家建設の原理はシンプルにその二つに尽きる。客観的に見たとき、そして総括的に言えば、中国と日本の社会の変化は、その二つの成功原理に深刻な亀裂感と閉塞感を漂わせている。

b0018539_1323745.jpg黒ネコ白ネコ理論では経済格差と社会的不平等を拡大させる一方で、中国の伝統的な利己主義や血縁主義を蔓延させる方向にのみ社会を誘導してしまう。貧富の差は開き、沿岸部と内陸部の不均等は是正されず、逆に増大する方向に経済構造が組み上がる。マクロ・エコノミーの数値ベースで成長と成功を達成しても、社会的には矛盾が蓄積して多数の不満となり、政治の不安定化に直結する。中国共産党が一党独裁のシステムを維持しながら今後の中国を経営するためには、鄧小平の経験と指針に代わる新しいイマジネーションが必要だろう。それはベースとして中産層が社会の大半を占める先進国の経済モデルであり、西ヨーロッパの市民社会と福祉国家の理念型であると思われる。外から見ながら、無責任な立場で言えば、今後の中国に必要なのは、やはり利己主義や血縁主義の盤踞を克服する市民的な倫理思想であるに違いない。それを教導する新しい思想的指導者の登場が必要な時期ではないか。
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by thessalonike | 2005-04-27 23:30 | 中国の反日デモ (10)   INDEX  
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