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呉副首相会談キャンセルの政治 - 安倍晋三と町村信孝の謀略
b0018539_111111.jpg呉儀副首相の経歴を見ながら、あらためて今回の彼女の訪日の持っていた意義の大きさと会談キャンセルの政治の深刻な意味を考えさせられる。呉儀副首相がどういう人物か、今回の事件があるまで私は全く知らなかった。首相の温家宝とか、外祖の李肇星とか、小粒揃いの現在の中国の指導部の中で、呉儀は異色の存在であり、中国政府の新しい顔である。WTOへの加盟とSARS問題の解決は彼女の最近の功績であり、その手腕が世界で評価されて、米国『フォーブス』誌の「世界で最も影響力のある女性トップ100」の第2位にランクされる結果となった。中国のWTO加盟とSARS収拾は世界が注目した大問題であり、その二つをやり遂げた呉儀を欧米のメディアは注目して見ていたわけだ。日本ではこれまで無名の存在であり、今回が呉儀の日本デビューだった。切り札である呉儀を送り込んだことは中国の並々ならぬ決意を示すものであり、懼くだが、中国は彼女にWTOとSARSに続く三つ目の難問解決の機会と栄誉を与えて、世界のメディアの前で存在を輝かせるつもりだったのだろう。



b0018539_1111641.jpg現在の中国で呉儀はシンボリックな国民的存在であり、勤勉実直と公平無私の鏡のような偉大な人物である。努力家であり、仕事が早く、最高の成果を上げ、部下をよく指導する。経歴その他を見ると、石油技師だった呉儀を抜擢したのは朱鎔基のようである。『人民中国』に書かれている呉儀への絶賛記事を読んでいると、紙背に仕事の鬼であった朱鎔基の姿を見る思いがする。現在の中国の課題は(これは中国の宿命的な永遠の課題でもあるが)汚職との戦いであり、縁故主義との戦いである。呉儀的なシンボルが必要なのであり、朱鎔基がまさにその人だった。呉儀のサクセスストーリーをマキシマムにして国民の前にプレゼンテーションすること。グロスでは経済大国となりながら、貧富の差が開き、不正が横行して、内部に倦怠と鬱屈と閉塞が充満しつつある中国で、呉儀の人間像は国民のモラルとモチベーションを維持する上できわめて重要なシンボルであるに違いない。呉儀に続く者が必要なのであり、呉儀に続く若くて有能な者に新しい中国の舵取りを任せなければならないのだ。

b0018539_1112882.jpgその呉儀の初めての挫折。呉儀訪日のニュースはテレビではあまり取り上げられなかったが、新聞ではかなり詳しく報じられている。名古屋で北側一雄と中川昭一と会談し、ビザ拡大問題で協議している。週末は北海道に飛んで高橋知事に観光ビザ拡大の要請をし、その足で知床や摩周湖や阿寒湖を観光して歩いている。国務院委員である呉儀は経済産業担当の国家の最高政策責任者であり、外交政策における唐家旋と同じ立場にある。だから奥田碩が中南海を訪ねた時は、呉儀が政府の責任者として出てきて応対協議するのである。大物なのだ。大物であり、看板スターである。私は今回の会談キャンセルの政治は日本側の謀略であろうと疑っている。真実は後になって洩れ出るだろう。キャンセルが決まったのは22日の夜だが、それまでは小泉首相との会談の予定で日程が進行していたのである。外交というものは、特に首脳の外交は、基本的に最初からお膳立てができている。呉儀副首相の訪日と小泉首相との会談が公表された時点で、プレスリリースのドラフトが出来上がっていなくていけない。

b0018539_1185849.jpg私の推測だが、反日デモによる大使館と領事館への損壊問題について、中国政府は小泉首相との会談で呉儀に収拾させ、すなわち陳謝と賠償を明言するつもりだったに違いない。そしてその代わりとして、靖国問題や教科書問題や台湾問題について小泉首相から前向きな善処の言葉を得ようとしたのだろう。そして大筋ではその方向で纏まっていたはずである。両国外務省同士の間ではその線で合意が取れていたに違いない。だが、そこから安倍晋三の巻き返しが始まり、具体的な小泉首相の善処の発言の中身について武部勤と唐家旋が21日に北京で詰める局面となり、そこで事務方が決めた合意事項が覆され、靖国参拝反対は内政干渉だなどという主張が武部勤の口から出て、唐家旋が激怒し、22日夜までに溝が埋まらず、やむなく会談キャンセルへと至った。最終折衝は武部勤と唐家旋の間でやっていたのであり、最後まで自民党が突っ撥ねて妥協線が見出せなかったのである。安倍晋三は最初からこれを狙っていて、あくまで日中関係を冷却化の極に持って行くべく謀略の手を打ったのだ。

b0018539_1115361.jpg中国の面子を潰すことと関係改善の端緒を潰すこと。これが安倍晋三の狙いであり、言葉巧みに中国を誘き出し、罠に嵌めて謀略は成功した。町村信孝が京都で李肇星を騙したのである。これは中国に向けての日本右翼の強硬外交であると同時に、日本外務省内部の親中派を叩き潰す策略でもあったに違いない。中国政府との間で関係改善に奔走してきた外務官僚は立場を失い、中国からも信頼を失う事態となった。暫くは本格的な実務者調整はできない。対中外交は右翼が支配しコントロールする。中国との関係が北朝鮮との関係と同じになる。今朝の朝日新聞では奥田碩が小泉首相の靖国参拝を批判するコメントを出していた。奥田碩は今回の会談キャンセルの政治の全てを知っている。だから23日の昼食会の席での奥田碩の表情は沈鬱なものだった。ビジネスの先が見えたのだ。日本デビューを飾れず失意のうちに離日しなければならなかった呉儀には気の毒だったが、私がもっと同情するのは駐日大使の王毅である。逸材王毅に試練の日々が続く。艱難汝を玉にす。王毅にはその言葉を贈るしかない。

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by thessalonike | 2005-05-23 23:30 | 中国の反日デモ (10)   INDEX  
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