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核実験の代わりの核保有宣言 - 実質開始の米朝二国間協議
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北朝鮮の金桂冠外務次官は8日、米テレビ局ABCニュースとのインタビューで、北朝鮮は米国の攻撃を防ぐのに十分な数の核兵器を保有しており、さらに増やす過程にあることを明らかにした。金次官は、核兵器を保有しているという北朝鮮の従来からの主張を繰り返した。ただ、その規模についての言及は差し控えた。次官は通訳を通じて、「北朝鮮には米国からの攻撃を防ぐに十分な核兵器がある。何個保有しているかは秘密」と述べた。北朝鮮が核兵器を増やそうとしているかとの質問に対しては、「そうだ」と答えた。米本土を攻撃できるミサイルを持っているかという質問に対し金次官は、北朝鮮の核開発が米国を狙ったものではないと言明。「米国を攻撃する意図は全くない。そのような憶測を抱いてはいけない」と語った。 金次官は、「北朝鮮の科学者には、世界の他の地域の科学者に匹敵する知識があることを知ってほしい」とも述べた。 (6月8日ロイター)




b0018539_16395976.jpg今日のトップニュースで、メディアでも早くもいろいろな角度から活発に分析が試みられている。非常に面白い。私はこれは北朝鮮の核実験に代わる政治だと見ている。対米外交だ。核実験を挙行するかわりに米国メディアに対して核兵器の保有を宣言したのである。北朝鮮の核実験は6月中に行われるだろうという予測があった。5年前に歴史的な南北首脳会談があった6月13日や、55年前に朝鮮戦争が勃発した6月25日が実験挙行日に選ばれるのではないかという観測が専らだった。北が核実験をやるかやらぬか、見方は二つに割れていて、例えば先月末に来日した金大中などは自信を持って北は核実験はやらないと明言していたのだが、私自身は核実験に踏み切る公算が高いのではないかと読んでいた。北朝鮮にとって六ヶ国協議は都合よく利用する外交カードであり、周囲を困らせるゴネ材料の一つであり、本音の目標は一貫して米国との二国間協議であり、米国による体制保証と包括的支援の獲得である。

b0018539_16394643.jpgこの姿勢は全く揺らぐことなく、どこまでも時間をかけて米国を二国間協議に追い込むべく食らいついている。米国が二国間協議に応じない間は核兵器と弾道ミサイルの開発を続ければよいわけで、北朝鮮にとってみれば時間を稼げて交渉カードが増えるだけなのだ。現在の米朝関係は、ある意味で実質的に二国間協議に入っている。北朝鮮国連代表部の外交官と米国務省の担当官が直に接触しているし、米国側が金正日にミスターの呼称で配慮するなどの変化が具体的にあらわれている。米国は明確にアメとムチの両方の戦術で北朝鮮に臨んでいて、一方で核問題を国連安保理に付託するぞと脅しながら、他方では早く六ヶ国協議に復帰して核放棄を宣言しろと迫っている。米国の本音はどうやら六ヶ国協議での問題解決のようであり、もしそうでなければ核兵器保有が明らかな現時点で、即座に安保理に付託していてよい。安保理に付託すれば結論は経済制裁だが、その場合でも処断の決定権を握るのは米中露の三国である。

b0018539_1639327.jpg安保理の一般意思などというものはないが、たとえば非常任理事国として処分決定に偶々参加する立場の途上国などからすれば、この問題はなるべく六ヶ国協議で解決して欲しいと考えるだろうし、米国の主張に無条件に賛同するのではなく、中露韓の顔色も窺って様子見をするだろう。それはアナン事務総長も同じであり、簡単に安保理付託・経済制裁決議の路線ではなく、六ヶ国協議でのマイルドな問題解決を期待しているに違いない。それはイラク戦争の苦い経験が皆をしてそのようにさせるのであり、戦争を方向づける既成事実や規定路線が固められるのは極力避けようと多くの国々が考えるのである。国際世論は六ヶ国協議の支持であり、プレッシャーは米国と北朝鮮の両方にかけられている。安保理付託が経済制裁決議までスムーズに運ぶ条件は、北朝鮮が核実験を敢行した場合のみであって、今この時点では安保理も六ヶ国協議も結果はさほど変わらない。安保理に付託すれば米国の勝ちではないのだ。

b0018539_16391645.jpg今、北朝鮮と米国がやっているのは、ラウドスピーカーを使った二国間交渉で、そこでライス長官の発言が気に入らないとか難癖をつけて交渉を有利に運ぼうと北朝鮮は小細工をやっている。ラウドスピーカーを使ったメディア戦の後で外交官同士が顔を合わせるとき、全てがパッケージで問題解決され、六ヶ国協議が儀式として催行されて共同宣言でお開きとなる。北朝鮮はそのような考えだろう。北朝鮮は核保有国になってしまったが、核保有国になったから米国は北朝鮮を軍事攻撃できないのではなく、もともと北朝鮮との戦争は論理的に不可能なのだ。戦争を支持する国が周囲になく、特に韓国が体を張って米朝戦争を阻止するからである。北と開戦した場合、展開の如何で韓国軍と米軍が激突する可能性が十分ある。ピンポイント爆撃にすら踏み切れない。米国の兵器産業とネオコンは戦争大歓迎だが、イラクと違って北朝鮮の場合はせいぜい経済制裁止まりで我慢せざるを得ず、新型爆弾や最新鋭ミサイルの大量消費はなく、結局のところ何のメリットも無い。北朝鮮と本気で戦争を始めたいのは日本の右翼ネオコンだけなのである。

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by thessalonike | 2005-06-09 23:30 | 北朝鮮問題考 (10)   INDEX  
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