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大詰めを迎えた六ヶ国協議 - 蚊帳の外に置かれた日本外交
b0018539_1031207.jpg当ブログでも頻繁に取り上げて紹介している中国国務委員の唐家旋が13日に北朝鮮を訪問して金正日と会談した。唐家旋は中国の外交政策を統括する最高首脳だが、外遊するのは本当に珍しい。常に釣魚台迎賓館の奥の間で外国から訪中してきた首脳クラスと会うのが仕事で、その姿はまさに往年の中華王朝の朝貢外交を彷彿させるものだった。自分からは絶対に外に出ない。国務委員になってからは米国も日本も一度も訪問していないはずである。その唐家旋が平壌へ動いた。今回の北朝鮮訪問が中国にとって並々ならぬものであることを示している。唐家旋の訪朝は、唐家旋が北京でライス長官と会った次の日に行われていて、素早い身の動きに注目される。訪朝の内容について米国側と最終的な調整があったのだろう。26日からの六ヶ国協議の中身がこうしてビシビシと固められているのであり、協議全体の成果について北朝鮮に受け入れさせるべく唐家旋が詰めに行ったのだ。つまり今度は絶対に卓袱台をひっくり返すなよと釘を刺したわけである。



b0018539_10313874.jpg唐家旋訪朝以上に中国の重い決意を伝えるものはない。これをひっくり返したら中国は北朝鮮を完全に見限るというシグナルと解することができよう。これまで三回開かれた六ヶ国協議は、米国と北朝鮮との間の対立と隔絶が大きく、間に入った中韓が周旋に奔走して、何とか六ヶ国協議体制の枠組みを壊さずに次回の協議開催にこぎつけるのが精一杯だった。今回は少し様子が違う。実行政策的な中身が入っている。次回開催を確認して終わりにはならない。必ず何らかの合意と計画が発表されるだろう。唐家旋と金正日の会談が実現したことで、今回の六ヶ国協議の成功はほぼ見えたも同然と言ってよいのではないか。国際外交は公式協議の席に着く前に実質的な交渉を終えている。私は前に米朝二国間協議はすでに始まっていると述べたが、水面下の米朝協議の進展があって、ようやく今回の六ヶ国協議の中身が詰まった感がする。北朝鮮が要求していた体制保証の問題について、北朝鮮側が納得できる米国の対応が出てきたということだろう。

b0018539_10315170.jpgイラク戦争の泥沼化が深まって米国の国内で厭戦気分と政権不信が高まっている。その世論は米政権内部の権力のバランスに影響を及ぼして、ラムズフェルドらネオコン組の地位低下とライス長官の相対的地位向上の結果に繋がっている。六ヶ国協議をめぐる米外交のイニシアティブもライス長官と国務省が完全に握り直した。アーミテージの引退も大きい。そうした情勢の変化があり、中国と韓国の奔走と努力があって、六ヶ国協議は実のあるものになろうとしている。韓国の動きも実に精力的だった。鄭東泳統一相は13日に北朝鮮への電力直接供給を提案したが、彼は6月20日に金正日と会談して安全保障上の北朝鮮側の対米要求を聞き出し、その足で米国へ飛んでチェイニー副大統領と話を詰めている。この会談は大きかっただろう。米朝を繋ぐ特使として獅子奮迅の国際外交を演じたわけだ。米国も鄭東泳統一相と韓国の外交能力を認め、それへの依存度を高めたことになる。韓国は六ヶ国協議体制のキープレイヤーとして自信を深めたに違いない。

b0018539_1032232.jpg今回の六ヶ国協議で目立ったのは韓国と中国と米国の動きであり、この三ヶ国が動いて全てを取り纏めている。日本とロシアは完全に蚊帳の外に置かれた。特に日本の蚊帳の外ぶりが目立つ。日本の外務省には何も情報が入らなくなっているのである。韓国からも中国からも情報が入らない。米国だけに情報を頼らざるを得ず、と言うことは、米国が日本に何を伝えたとしても、日本はその情報の裏を取ることができない。完全なお飾りになってしまったのである。中身の策定には加われず、協議で決まった実行政策について米国に言われるままにカネを拠出するだけだ。3月の竹島問題と4月の反日デモの後、日韓、日中の間は完全に冷却化して、日本の外交官は韓国と中国から情報を取れなくなった。そして韓国も中国も米国も、日本から取ろうとする情報は何も無い。田中均審議官がミスターXと秘密交渉をしていた頃は日本も独自の北朝鮮情報を持ち、それなりの地位を保持していたのだが、現在はそれもなく、日本には資金提供以外の存在意義がない。

b0018539_10321473.jpg圧巻だったのは、韓国の宋旻淳外交通商省次官補が12日のラジオで「拉致問題は六ヶ国協議の議題になり得ない」と述べたことで、当然、これは米国の了承を確認した上での発言である。米国が六ヶ国協議からの「拉致問題外し」に同意しているのだ。北朝鮮の要求を認めているのである。この宋次官補の一言ほど日本の現在の国際社会での外交的地位のありさまを明瞭に示すものはない。愕然とさせられる。右翼は掲示板とブログで日本の六ヶ国協議からの離脱を叫んでいるが、事実上、日本は六ヶ国協議の参加国の地位を得ていないも同然である。国際外交の現場から締め出されているのだ。韓国も中国も、日本はすでに米国の属国と看做していて、独立した意志と能力を持った外交主体として相手にしていない。米国を通して言えば、日本への要求は何でも届く。そしてメディアは十年一日の拉致問題騒ぎであり、経済制裁断行のファナティックなシュプレヒコールのリフレインである。72年前の国際連盟脱退と二重映しの予感を覚えるのは私だけだろうか。
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by thessalonike | 2005-07-14 23:30 | 北朝鮮問題考 (10)   INDEX  
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