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「直球勝負」の欺瞞 - 清原和博の球宴本塁打記録は無価値
b0018539_1153364.jpg22日のオールスターゲーム第一戦について、マスコミは清原和博と松坂大輔の「直球勝負」の醍醐味を激賞する記事を書いて囃しているが、そのような見方には納得できない。球宴で相手投手に直球だけを投げろと要求し始めたのは清原和博だが、ノセられた投手を含めて周囲がそれを批判せず、お祭りだからいいやと容認するようになった結果、日本の球宴文化は歪み始めた。ストレートだけで勝負すれば打者に有利になるに決まっている。どれほど速い球を持っていても、変化球を投げなければ速球は武器として生きない。直球と変化球の二つがあり、タイミングの変化があるからこそ速球が威力を持ち、変化球が威力を持つのである。最初から変化球が封じられた投手の投球などバッティングピッチャーと何ら変わるところはない。打たれて当然だ。それでは本当の意味の真剣勝負にはならない。そのような見せ物は野球ではなく、まして年に一度の祭典である球宴で見せるべきものではない。TBSの筋肉番組ででもやればよい余興である。投手の武器をフルに駆使してこそ真剣勝負ではないか。



b0018539_11541183.jpg我々が見たいのは選手のベストなパフォーマンスである。特に日頃よく見ることのできないパリーグの選手の活躍に注目している。さらに言えば、球宴で最も期待する場面は、実力のあるパリーグの投手がセリーグの打者を押さえ込む場面である。ずっと昔、子供の頃だったが、阪急の山田久志と近鉄の鈴木啓示とロッテの村田兆治の三人が九回を完封リレーしたことがあった。三人がお立ち台の上で誇らしげに凱歌を上げていた。テレビで滅多に見ることのできない「実力のパ」を思い知らされて感動した記憶がある。清原和博が演出する「直球勝負の球宴」に阿付記事を書いている記者たちは思い出すべきだが、江夏豊が九者連続三振を奪ったときも、江川卓が八連続奪三振を演じたときも、直球だけ投げてそれを実現したわけではなかった。変化球と直球の両方で三振を取ったのである。球宴に出場する投手の夢は江夏豊や江川卓の伝説にこそある。清原和博にスピードボールを投げて抑えたとか打たれとかではない。清原和博が確立したこの悪しき球宴文化は一刻も早くリセットするべきだ。

b0018539_11535374.jpg先発の松坂大輔は例によって球の制球が悪かった。松坂大輔は大試合の舞台に登板すると緊張して制球を乱す。この子の悪いクセで何年経っても直らない。速球がコースも高さも外れていた。そういう時こそスライダーでカウントを稼いでピッチングを作るべきだが、直球勝負に無理に拘って甘い球を投げていた。あれでは絶対に抑えられない。私が伊東勤なら、王貞治のように試合の勝利を何より優先させるなら、松坂大輔には先発の役割は負わせない。ファン投票2位の渡辺俊介に先発させて、松坂大輔は中盤の二番手で三回を投げさせる。この子は檜舞台の緊張感に弱い。プロに入った二年目頃からそういう投手になってしまった。若い松坂大輔の場合はまだご愛嬌で済まされるが、西口文也は球威もないのに清原和博に無意味な直球勝負で本塁打を打たれた。あれは絵にならない。ああいう場面は見せて欲しくない。喜んでいたのは痴呆の東尾修だけだったが、歪(いびつ)な「速球勝負」を演出して打った清原和博の13本の球宴本塁打に、記録として認める価値が本当にあると言えるのだろうか。

b0018539_11542593.jpg22日の球宴で印象に残ったのは、小笠原道大が上原浩治から右翼席に叩き込んだ一発と、渡辺俊介と里崎智也のバッテリーが見せた荒木雅博の盗塁殺だった。渡辺俊介のアンダースローのクイックは実に見応えがあった。そうでなくてもアンダースローはモーションが大きい。そして投球のスピードも遅い。どうやって(セリーグ現在第2位の)俊足の荒木雅博の盗塁を阻止するか見ものだったが、捕手の里崎智也との息の合った連携で見事に刺した。里崎智也の二塁への送球も絶妙だった。落合博満はさらに見せ場を作って、今度は一塁走者を井端弘和に替えて二塁を奪おうとしたが、渡辺俊介のクイックのセット投法のタイミングを盗めず、ベースを離れたところで不意に立ち往生するという場面があった。面白かった。あれこそプロ野球の醍醐味である。セリーグには渡辺俊介のようなアンダースロー投手がいない。井端弘和も面食らってしまったことだろう。渡辺俊介のアンダースローはそれだけで十分に野球のビジュアル・バリューを持っている。交流戦の巨人戦で見られなかったのが残念だった。

b0018539_1271980.jpgセリーグではニ年前まで高津臣吾がいた。が、渡辺俊介に較べれば、高津臣吾もむしろサイドスローに近い。渡辺俊介のアンダースローはアンダースローの理念型である。往年の山田久志を彷彿させてくれて嬉しい。昔は各球団のローテーションの中に一人はアンダースローを揃える習慣があった。日本人男子の体格が大きくなり、オーバースロー全盛となった現在ではそれがなくなった。最近は甲子園の高校野球でもアンダースローの投手を見かけなくなった。アンダースローは米国野球にはない日本野球の概念である。日本人の知恵と工夫が編み込まれて結晶化している。大袈裟に言えば国の宝だ。だから渡辺俊介のようなアンダースローでプロで成功する投手が一人でも多く出て欲しい。渡辺俊介を真似る若い子に出てきて欲しい。球宴ではファン投票で選出された阪神の選手が溌剌と活躍してセリーグの得点と勝利に貢献していた。一方、同じファン投票で出場しているロッテの選手たちに少し元気がない。前半戦の疲れが出ている。果たしてロッテは史上最強のバンクを制してリーグ優勝できるだろうか。

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by thessalonike | 2005-07-25 23:30 | プロ野球関連 (5)   INDEX  
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