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本と映画と政治の批評
by thessalonike

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安明進証言と蓮池薫証言の矛盾 - 国家的謀略としての拉致問題
安明進証言と蓮池薫証言の矛盾 - 国家的謀略としての拉致問題_b0018539_12564998.jpg先週の出来事の中で最も重要でショッキングな事件だと思われたのは、北朝鮮拉致問題をめぐって国会に招致され参考人証言した安明進の発言内容に対して、拉致被害者の蓮池薫がそれを否定した報道である。この問題を論じ始めると右翼から大量のスパムコメントやスパムトラックバックの嫌がらせが来て憂鬱になる。北朝鮮拉致問題に限って言えば、わが国に言論の自由はない。拉致被害者やその家族を少しでも批判する言説は、戦前の「不敬罪」の如きレッテルを貼られて袋叩きの目に遭わされる。拉致被害者と拉致被害者家族はアンタッチャブルの存在だ。マスコミは彼らを聖人のように崇め奉るしかなく、放送と活字の世界では経済制裁を煽る言論しか許されない。拉致事件の真実の解明を求め、そして経済制裁に反対する言論は、こうしてネットの隅で匿名を保護された環境でしか最早不可能なのである。最近の報道番組で誰かが「日本の外交は拉致問題に拉致されている」と発言していたが、外交だけでなく日本の言論の全てが拉致問題に拉致されている。私は前に「北朝鮮拉致問題は現代の満州事変である」と論じた



安明進証言と蓮池薫証言の矛盾 - 国家的謀略としての拉致問題_b0018539_1257585.jpg蓮池薫の安明進証言否定の一件はきわめて重大な政治事件だが、報道機関がその後をフォローして事実関係を検証しようとしない。金正日独裁政権を非難するプロパガンダを散布するときは、何度でも安明進をスタジオに呼んで「衝撃の真実」を喋らせるくせに、この深刻な問題局面で安明進をカメラの前に立たせない。安明進と蓮池薫の証言の矛盾について真相を糾そうとしない。視聴者である国民一般が今いちばん知りたい問題がそこにあるのに、大谷昭宏も小倉智昭も誰も追及しようとしない。そしてマスコミが真相糾明しないことが責められずに放置されている。おかしいではないか。どちらかが嘘をついている。安明進か蓮池薫か、どちらかが嘘を言っている。仮に安明進の証言が嘘であるなら、安明進はわが国の国権の最高機関たる国会で偽証行為を働いたことになる。日本国に対する冒涜の極致だ。そもそも、国会は参考人招致した安明進の身元を正確に調査し、確認を取った上で委員会招致の手続を取ったのか。安明進が本当に元特殊部隊工作員の脱北者であるかどうかは疑問を投げかける声が以前からあった。

安明進証言と蓮池薫証言の矛盾 - 国家的謀略としての拉致問題_b0018539_1257164.jpgその代表的な見解が和田春樹のものだったと思うが、三年前の出来事があって以来、和田春樹は国賊のように右翼と元共産党の連中に糾弾攻撃され、そして和田春樹の権威失墜とパラレルに安明進証言の信憑性が喧伝されてきた。三年前に安明進がテレビに出始めた頃は、日本中の誰もが安明進を信用し、その証言を「衝撃の事実」の暴露だと思い込んだのだが、安明進の「証言」は一度に全ての「真実」を喋るのではなく、何かタイミングよく出て来ては、「あの人がいた、この顔を覚えている」と言っているように聞こえ始め、次第次第に怪しげな雰囲気が漂ってきて、三年後の現在では全く信用できないものになってしまった。現在の印象では、右翼「救う会」が謀略的に利用している駒の一つだ。本当に元北朝鮮工作員だったとは信じられない。例の北朝鮮の工作員養成所である「金正日政治軍事大学」だが、あれも果たして本当に実在するのか。私の記憶では、ある日突然、北朝鮮問題専門家を名乗る恵谷治と高世仁が民放のワイドショー番組に出てきて、「衛星写真を入手しました」と言いながら金正日政治軍事大学の話を始めた。

安明進証言と蓮池薫証言の矛盾 - 国家的謀略としての拉致問題_b0018539_1313072.jpg衛星写真には大きな学校の校舎や講堂のような建物の影があり、グラウンドと寄宿舎の影が写っていた。番組では、写真を見た安明進が、この寄宿舎で暮らしていたとか、講堂で話を聞いていたら、後ろの方に横田めぐみがいたとか、背の高い教官が蓮池薫だったのでよく覚えているなどと証言をしていた。そして金正日政治軍事大学の敷地の裏手には少し離れたところに教官たちの宿舎があり、そこに続く道で横田めぐみとすれ違って挨拶をしたなどと安明進が言っていた。思い出してもらいたいが、教官たちの宿舎があるところというのは、例の蓮池薫一家と横田めぐみ一家が近所同士で住んでいた集落であり、川が流れて、橋があって、保育園があって、そして蓮池祐木子夫人が横田めぐみは母乳が出なくて云々という証言をしていた生活環境のところと同じだろうという話になっていた。蓮池薫一家と横田めぐみ一家は平壌市郊外にある金正日政治軍事大学の敷地に隣接する集落で一緒に暮らしていたという話になっていたではないか。今回の蓮池薫の証言が事実なら、安明進と恵谷治が言ってきた話は全部嘘ということになる。

安明進証言と蓮池薫証言の矛盾 - 国家的謀略としての拉致問題_b0018539_12575391.jpg安明進の証言が事実なら蓮池薫の証言が嘘だ。蓮池薫は事実は全て政府と被害者家族に話していると言う。そしてマスコミの前では話さないと言う。マスコミはなぜそれを見逃すのか。蓮池薫が国民の前で真実を言わないのなら、なぜ政府(外務省と内閣府)の人間の口から真実を聞き出そうとしないのか。それをするのがマスコミの使命だろう。政府と家族に全て話したからと言って証言を逃げているのは曽我ひとみも同じである。現場のマスコミは曽我ひとみを目の前にしながら、それ以上一言も追及しようとしない。右翼の暴力が怖いからか。上から圧力をかけられているからか。蓮池薫や曽我ひとみから娘の情報について全て聞いて知っているはずの横田早紀江は、海水浴の写真とか、何か「救う会」が情報を小出しにする毎に、「こんなことは初めて聞いた」などとカメラの前でわざとらしい演技をしている。最近ではまるで娘のことなどそっちのけで「北朝鮮への怒りを煮え滾らせろ」とファナティックなアジ演説ばかりである。北朝鮮拉致問題は現代の満州事変だ。これは政権と右翼の謀略であり、われわれは国家的謀略によって騙されている。
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by thessalonike | 2005-08-05 23:30 | 北朝鮮問題考 (10)   INDEX  
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