球界再編考(1) - 古田は日本の民主主義の偉大な守護神
b0018539_17384251.jpgプロ野球の話題がトップニュースになるのは異常ではないかという声が一部にあるけれど、本来、この問題は日本の民主主義の根幹に触れる重要事であり、その意味できわめて政治的な問題であるように思われる。国会や閣議の映像が流されればそれが政治報道だというわけでは決してなく、永田町の政治家や霞ヶ関の官僚がマスコミを使って自分たちに都合のいい情報を垂れ流しているのを意味のある報道だと思うのは間違っている。今回の選手会のストライキをめぐる騒動は、この国の民主主義のあり方が国民一人一人の前で問われた大きな社会的事件だった。制度としての民主主義が確立しているこの国で、多数者の意思を現実化することがいかに困難か。多数者の支配というデモクラシーの原理を実現するのに、どれほどの苦労と幸運が必要になるか。



b0018539_1739415.jpg百四十万人の署名、古田選手会長という幸運、そして結果としての世論の圧倒的支持。それがあってようやく勝ち得た2リーグ制維持。ギリギリのところで守り抜いた民意としてのプロ野球の理念。権力を持って社会を支配統治する少数者をウォルフレンはアドミニストレータと呼ぶが、機構側のテーブルに座っていた白髪の老人たちこそまさにこの国のアドミニであり、そして球場の外野席で「古田支持」の看板を掲げて頑張っていた無名の連中が、アドミニの支配にプロテストして闘争する民衆(マルクスの言葉で言えば被支配階級)の前衛たちだった。統治者であるアドミニと統治される民衆の角逐。そのドラマが演じられたのであり、そして弱い者が団結して戦い、強い者の恣意と横暴に抵抗して、最後はそれを粉砕したから、われわれは心からそれに感動し喝采するのだ。

b0018539_17392293.jpg多数者でありながら物事を決める権限を持たされない、権力から疎外されたデモスの意思。それを古田と選手会は代表した。本来、労働組合たる選手会はそのような性格の立場ではなく、単にプロ野球選手の福利厚生プロパーが目的の組織なのだけれど、他に機構(アドミニ)に対決する存在がなく、多数者である市民の声を担う者がなく、古田がそれを背負い、労使交渉という場で多数の声を代弁してくれた。真の争点はストでも球界再編でも何でもなく、プロ野球は誰のものかという権利の問題であり、誰の意思がプロ野球の将来を決められるのかをめぐる権利の争奪戦だった。プロ野球は私企業の経営の論理で責任が完結するものなのか、それとも地域住民や国民全体が権限と責任を保有するものなのか、私的なものか公的なものかが問われたのだ。

b0018539_17393653.jpgさらに言えば、本来公的な文化財であるはずのプロ野球を、私的に壟断し専横しようとする読売グループ総帥の渡辺恒雄の老醜と傲慢に対して、国民が怒りを爆発させてストップをかけたということだろう。しかし、それもこれも古田敦也という一個のカリスマの存在がなければ不可能なことで、彼がいなければ国民の意思を貫徹することはできなかった。真剣で率直で責任感が強い、絵に描いたような素晴らしい政治的指導者の人格像。六度の交渉の過程における古田敦也の一挙手一投足が絶妙で、後世に語り伝えられるべき偉大な英雄物語がそこにあった。古田に感動させられた。日本の国民が政治家に求めて得られない人間の姿。昨夜のテレビ朝日『報道ステーション』で、朝日新聞編集委員の加藤千洋は、古田に対して「久しぶりにストらしいストを見た」と言葉をかけて労った。

b0018539_173950100.jpg私は久しぶりに(緊張感のある)政治らしい政治を見、そして本来の政治的リーダーの姿を見た思いがする。演技のない、真面目な、全体のことを真剣に考え、強い信念を持って行動する優秀な男。言葉と表情の一つ一つが日本人に希望を与えた。今度の古田の偉業は、大袈裟に言えば日本の民主主義における一つの金字塔であり、画期的な民主主義の財産形成と言える。民主主義とは守るものだ。民主主義とは戦って勝ち取るものだ。権力者(アドミニ)は常に民衆の権利を有名無実化しようと陰謀するのであり、それを阻止して権利を実質化するためには、民衆はリーダーを立てて闘争しなければならない。そしてそのリーダーが有能でなければ闘争は勝利できない。プリミティブでベーシックな話だが、今回の事件の意義はそこにあり、日本の民主主義の歴史が1ページ書き加えられた。

署名をやり、デモをやり、プラカードを掲げ、ストを構えて戦うのが民主主義だ。リーダーを戴き、世論に訴え、世論を動かし、多数の支持を獲得するのが民主主義だ。祝 2リーグ制維持。

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by thessalonike | 2004-09-24 23:50 | 球界再編 ・ 岩隈移籍考(10)   INDEX  
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