
アラファト議長について印象に残っているのは、74年の国連総会での
演説で、詳細は忘れたが、「
私はここに平和の象徴であるオリーブと闘争の象徴である拳銃を持ってきた。どうか私の手からオリーブを落とさせないで欲しい」と訴え、第三世界諸国代表を中心に満場の拍手を受けた出来事があった。45歳のときの桧舞台。国連総会の席上に実物の拳銃を持ち込んだのは、アラファト議長が最初で最後だろう。あの頃のアラファトはまさにカリスマ的な英雄だった。日本にも
何度か来て、その都度、都心の街頭で右翼の街宣車が騒いだ。十年ほど前、久米宏の「ニュースステーション」に生出演していた記憶もある。小柄な体で、子供のような純真な大きな瞳をくるくる動かし、ときに微笑み、ときに真剣に見据え、パレスチナの窮状とイスラエルの非道を訴えていた。言葉と表情に説得力があり、魅力的であり、見る者を釘づけにした。
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